スロバキアの電動車(EV)向けバッテリーメーカー、イノバットは9日、世界初の「スマート電池」を開発したと発表した。現時点で世界最高水準のバッテリーに比べて、航続距離を20%伸ばすことに成功した。また、独自の製造法により、性能で優る製品を迅速かつ効率的に生産できる見通しだ。
同社の計画によると、スロバキア西部ヴォデラティで整備中の人工知能(AI)制御バッテリーの研究センターと生産ラインで、来年にも製造を開始する予定だ。また、10億ユーロを投じて生産能力10ギガワット(EV24万台の需要に相当)の工場を設置する計画も進行中で、2025年にも「スマート電池」の量産を開始する。
電池の性能としては、コバルトの使用を減らしながら、2023年末までに、エネルギー密度をキログラム当たり330ワット時(Wh)、1リットル当たり1,000Whへ引き上げる目標だ。
イノバットは米ワイルドキャットとの提携を通じ、多数の合成反応を比較的少ない労力で行う手段であるハイスループット実験(high-throughput experimentation:HTE)と、人工知能(AI)を開発に用いている。これにより、作業を始めてわずか1年で今回の「スマート電池」の開発に成功した。
イノバットの出資者及び戦略投資家、パートナーには、米ワイルドキャットのほかスロバキアの投資会社IPMグループ、マタドール(自部品製造)、AEN(エネルギー企業)、アクロス(物流関連企業)、MSMグループ(兵器、航空管制・ナビゲーションシステム)、チェコ国営電力CEZなどが名を連ねる。
今月初めには、特殊機械メーカーの独マンツに研究所併設の生産ライン用製造機械を2,000万ユーロ強で発注した。
また、7日には日産副社長、アストン・マーチンのCEO(最高経営責任者)などを歴任したアンディ・パーマー氏を非執行役員に迎えた。