ルーマニアのオルバン首相は10月末、訪問先のフランスで、同国政府とチェルナヴォダ原子力発電所の拡張事業に関し基本合意に達したことを明らかにした。同事業は国営の原発事業者ヌクレアルエレクトリカを通じて原子炉2基の新設と1基の改修を行うもので、フランスからは国営でウラン燃料最大手のオラノが参加する予定。同首相は訪仏中、フランスのカステックス首相との間で戦略的パートナシップの新しいロードマップに関しても合意した。
拡張事業の総工費は80億ドル。10月6日に妥結した米国のブルレッテ・エネルギー相とルーマニアのポペスク経済相の合意によると、米国のエンジニアリング会社AEComが主導する企業連合にはフランスのほかルーマニアとカナダの企業が参加する。
オラノは2017年に国営アレバの子会社として設立された。アレバが経営危機で分割された後は世界最大のウラン燃料の生産企業となっている。
ルーマニア政府は同事業を当初中国の中国広核集団(CGN)と実施することを計画していたが、欧州委員会が打ち出した包括的環境政策「欧州グリーンディール」に合致しないとの理由で交渉は決裂していた。背景にはエネルギーと通信分野におけるルーマニアと中国の関係深化を望まない米国の意向があるとみられている。10月6日の合意に際し米国のツッカーマン在ルーマニア大使は、今回の合意でルーマニアを中国の影響から引き離すことができると述べていた。