北マケドニアのEU加盟、ブルガリアとの歴史論争が新たな障害に

早期の欧州連合(EU)加盟を目指す北マケドニア(旧マケドニア)にとって、ブルガリアとの歴史論争が新たな障害となっている。EU加盟国は17日、各国の外相と欧州問題担当相によるテレビ会議で、北マケドニア、アルバニアとの加盟交渉の枠組みについて協議したが、北マケドニアについてはブルガリアが同問題を理由に拒否権を発動し、合意に至らなかった。

EUは3月の首脳会議で、加盟候補国となっている西バルカン地域の北マケドニア、アルバニアとの加盟交渉開始を正式承認し、12月に交渉が開始される見込みとなっていた。今回の会議では、交渉の枠組みで合意するはずだった。

ブルガリアと北マケドニアは地理・文化的に密接な関係にある一方で、歴史認識の問題を抱えている。とくに大きな焦点となっているのが、マケドニアの言語名をめぐる問題。ブルガリアはマケドニア語をブルガリア語の方言と主張し、「マケドニア語」の存在を否定している。

ブルガリアのザハリエヴァ外相は今回の会議で、言語論争が決着していないことや、ブルガリア国内のマケドニア系小数民族の扱いをめぐる問題などを持ち出し、加盟交渉の枠組みを承認することを拒否した。EUが公文書で「マケドニア語」という用語を使わないことなどを承認の条件としている。

EU議長国ドイツのロート欧州担当相は、同問題を両国間で解決し、ドイツの議長国任期が切れる年末までに加盟交渉開始にこぎ着けることを願うとコメントした。

北マケドニアは旧マケドニア時代の2005年に加盟候補国として認定された。次のステップとなる加盟交渉開始をEUが承認するまで15年もかかったのは、1991年に旧ユーゴ連邦から独立した際に正式名称を「マケドニア共和国」としたことをめぐり、ギリシャが古代ギリシャの英雄アレキサンダー大王の出身地である同地の名前を全面に出した国名に反発したためだ。両国政府が2018年、マケドニアを「北マケドニア共和国」とする妥協案で合意し、ようやく交渉開始の承認を取り付けた経緯がある。

加盟交渉の枠組みは、現加盟国の全会一致での承認が必要。北マケドニアはブルガリアが拒否する限り、交渉を開始することはできず、悲願のEU加盟に向けて同国との歴史論争という新たな障害を乗り越えなければならない状況に直面している。

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