ポーランドのモラウィエツキ首相とハンガリーのオルバン首相は11月26日、ブタペストで首脳会談を行い、欧州連合(EU)がコロナ復興基金などの資金配分で「法の支配」の順守を条件とすることに反対することを確認した。復興基金を含む次期中期予算(対象期間2021~27年)案は全加盟国の承認が必要で、両国が抵抗の姿勢を崩さないことで成立のめどが立たない状況が続いている。
7,500億ユーロ規模の復興基金は、欧州委員会が市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、新型コロナによる経済の打撃が大きい国に補助金と融資の形で配分するというもの。EU加盟国が7月の首脳会議で合意していた。
しかし、法の支配が揺らいでいる国には復興基金による支援、EU予算からの補助金交付を禁止する仕組みをめぐり、標的とされたポーランド、ハンガリーが反発。拒否権を発動しているため、中期予算案の年内成立が危ぶまれている。
モラウィエツキ首相とオルバン首相は会談後の共同記者会見で、EU各国が早急の資金援助を必要としている状況で、EUが「法の支配」の問題を持ち出して妨害しようとしていると批判。また、資金配分と法の支配の順守を結び付けるには、EU基本条約の改定が必要として、法の支配に関する仕組みを白紙化して中期予算と復興基金を成立させ、同問題については別枠で協議することを提案した。
しかし、他の加盟国や欧州議会は、法の支配の順守を資金援助の条件とする仕組みが設けられなければ、予算案を承認しないという姿勢を堅持している。EUは12月10~11日に開かれる首脳会議での決着を目指すが、ポーランドとハンガリーに歩み寄りの気配はなく、復興基金の運用開始と中期予算の執行を予定通り1月から開始できない懸念が強まってきた。とくに復興基金による支援は、EU各国がコロナ禍を乗り切るための大きな切り札で、始動の遅れは他の加盟国だけでなく両国にとっても大きな打撃となる。