ノルド・ストリーム2が工事再開、米の制裁発動から1年ぶり

ロシアとドイツを結ぶバルト海天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」に関し、ロシア国営ガスプロムが過半数株を握るプロジェクト運営会社は11日、敷設工事を再開したと発表した。関連企業に対する米国の制裁発動を受けて工事を中止してから約1年ぶりの作業再開となる。

プロジェクト運営会社によると、今回の工事はドイツの排他的経済水域における2.6キロメートル区間が対象で、工事に必要な許可はすでに全て取得している。全長1,200キロメートルの94%は施行済みで、あとはドイツおよびデンマーク領海区間を残すのみだ。今後の具体的な敷設計画は、追って明らかにされる。

ノルド・ストリーム2は、2011年に稼働したノルド・ストリーム1と同様、天然ガスをロシアから西欧へ直接輸送するルートとなる。年間輸送能力は550億立方メートルに上る。

しかし、ノルド・ストリーム2に対しては、これまでの経由地であるウクライナやポーランド、そしてロシアに対する欧州のエネルギー依存の深まりを懸念するバルト3国など東欧を中心に批判の声が強い。他のパイプラインを含む新ルートの開発で、輸出経由地としてのウクライナに対するロシアの依存は急速に弱まりつつある。ウクライナ経由の輸送量は2018年の870億立方メートルから今年は650億立方メートルに減少し、来年から24年までは400億立方メートルにとどまる見通しだ。

米国も「欧州の対ロシア依存が強まる」と計画を拒否する姿勢を貫いている。昨年末には、プロジェクトに参加する独ヴィンタースハル、ユニパー、英蘭系シェル、仏エンジ―、墺OMVだけでなく、敷設するガス管の保管を請け負う港湾会社なども資産凍結の対象にする方針を明確にした。このため、工事がいったん中止された。ただ、米国の行動については「欧州に自国産の液化天然ガス(LPG)を売り込みたいため」という批判もある。

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