ショパンは同性愛者?

スイス放送協会(SRF)が先月放送した2時間の長編ラジオドキュメンタリーが波紋を呼んでいる。というのも、ポーランドの国民的英雄であるショパンが「同性愛者だった」という内容だったからだ。

番組を制作したモーリッツ・ヴェーバー記者によると、ショパンの「恋人」は男性ばかり。実家が学生宿を経営していた関係で知り合ったティトゥス・ヴォイチェホフスキに宛てた数多くの手紙を証拠に、ショパンが恋愛感情を抱いていたことは明らかと主張する。

それなのに「同性愛者」の事実が知られてこなかったのはなぜか。ヴェーバー記者は、「研究者や社会が目をそらしてきたから」と説明する。

ショパン書簡集の英語版では男性の代名詞が女性代名詞に置き換わっている例が複数存在する。そして、脚注には「初恋の人」コンスタンチア・グワトコフスカ、「婚約者」マリア・ヴォジンスカとのロマンスが語られているが、「ショパン研究の大御所」である国立ショパン研究所(ワルシャワ)に照会したところ、これらが真実であるとの「証拠はない」。ヴェーバー記者は、「ショパンの恋人」として知られる作家ジョルジュ・サンドとの「同棲」さえ、「偽装結婚的な関係」だったと推定する。

ティトゥスを初め、ショパンの「恋人」からの返事が「行方不明」となり、一通として残っていないことも、周囲が「同性愛」を隠すために処分したためと疑われる。

ショパンと言えばクラッシック音楽のファンでなくても知っている音楽史上の超有名人。ポーランド人にとってはヨハネ・パウロ二世やキュリー夫人と並ぶ英雄だ。

一方で、ポーランド与党の「法と正義(PiS)」は「カトリックの教えを尊重する保守派」を自認し、ドゥダ大統領を含む党の政治家が性的少数派(LGBTQ)を目の敵にする発言を繰り返している。「国民的英雄が同性愛者だった」という説にどう反応するか。今回も「外国がポーランドを侮辱した」ということになるのだろうか。

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