欧州委、横断エネルギー・ネットワーク規則改正案を発表

欧州委員会は12月15日、域内の国境をまたいだエネルギー関連のインフラプロジェクトを支援する枠組み「欧州横断エネルギー・ネットワーク(TEN-E:Trans-European Networks for Energy)規則」の改正案を発表した。欧州連合(EU)の包括的な環境政策「欧州グリーンディール」に基づき、欧州委が打ち出した戦略に沿ってインフラプロジェクトを支援できるようにするのが狙い。欧州議会と閣僚理事会で改正案について検討する。

EUでは2013年に制定されたTEN-E規則に基づいて、域内の国境をまたぐプロジェクトの中から支援対象となる「共通利益のプロジェクト(PCI)」を選定し、EU予算を投入してきた。これまでに95件のプロジェクトに計47億ユーロ(約5,920億円)が投じられている。

改正案によると、欧州委が7月に打ち出したエネルギー効率性向上のための「エネルギーシステム統合戦略」に基づき、新規制の下では循環型エネルギーシステムの構築や、再生可能エネルギーの利用促進、化石燃料からよりクリーンな燃料への移行を進めるプロジェクトが重点領域となる。これにより、例えば従来はPCIに含まれていた天然ガスパイプラインは対象外となり、今後はよりクリーンな水素エネルギーの輸送インフラとして活用される。

また、欧州委は11月、現在12ギガワットの洋上風力発電の能力を2050年までに300ギガワットに引き上げる目標を柱とする「海洋再生エネルギー戦略」を打ち出した。欧州委は同戦略に沿って洋上風力発電が可能な北海周辺、バルト海、地中海・黒海、北大西洋の4つの海域に区分けし、それぞれ関係国が送電会社の業界団体「欧州送電事業者ネットワーク(ENTSO-E)」と連携し、安定供給に向けて調整を行うことを提案している。

このほか改正案には支援の対象となる全てのプロジェクトが欧州グリーンディールに沿って持続可能性の要件を満たさなければならないことや、EU加盟国と隣接する第三国にまたがるインフラプロジェクトも一定の条件を満たせば支援の対象とすることなどが盛り込まれている。

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