伊とクロアチアがアドリア海にEEZ設置を計画、スロベニアは懸念

クロアチアとイタリアがアドリア海に排他的経済水域(EEZ)を設置すること計画している。すでに両国は昨年12月に外相レベルでEEZの境界について交渉を行うことで合意した模様だ。クロアチアのラドマン外相によると、EEZの設置は来年初頭が予定されている。一方クロアチアはスロベニアとの間にかねてより領海に関する紛争を抱えており、今後両国間で同問題をめぐる議論が激しくなる可能性が指摘されている。ただスロベニアがアドリア海に有する海外線はコペル港を中心とする沿岸部に限られていることから、同国の立場は弱いものにとどまるとの見方が大勢だ。

スロベニアではイタリアとクロアチアがEEZを設置することでアドリア海北部に公海がなくなり、同国の漁業者が操業できなくなると懸念されている。そのため国内では、以前漁業を行うことができた水域では例外的な操業を認めるようイタリアとクロアチアに交渉すべきだとの声が上がっている。

スロベニアにとりイタリアのEEZ設定は境界が既に確定していることから特に問題はない。一方クロアチアのEEZはクロアチア・スロベニア間の境界が定まっていないことから大きな問題をもたらす可能性がある。クロアチアは同国が海岸線を有するピラン湾における両国の境界線に関し、国際法廷が2017年に下した判決を受け入れていない。スロベニアの政治家で法学者のマルコ・パブリハは、クロアチアが予定するEEZには、同判決でスロベニアの公海への出口として設定された水域までが含まれていると主張する。同氏は、クロアチアはまず同判決の履行についてスロベニアと合意してから自らの権利を拡大すべきだと指摘している。

クロアチアは2003年に環境及び漁業保護水域を設定したが、当時イタリアとスロベニアは強く反発した。欧州連合(EU)加盟交渉中の08年には同水域をEU諸国に対しても主張したため、加盟交渉が停止に追い込まれている。その後同国は13年にEUに加盟した。

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