新型コロナ流行を背景に、トラック運転手の不足が悪化して輸送に支障をきたすという懸念が鉄鋼業界に広がっている。欧州の運送会社の多くが東欧出身のドライバーに頼っており、鉄鋼業界調査会社の英MEPSインターナショナルは、運転手が実際に感染するケースのほか、欧州内の国境封鎖や国境検査の厳格化で輸送網が機能しなくなる可能性を指摘している。
MEPSによると、英国・欧州大陸間の鉄鋼輸送の大半はトラックが担う。英国と北アイルランド、アイルランドでも状況は同じだ。先月は英国の欧州連合(EU)離脱を間近に控えた駆け込み需要や、英国南部で新型コロナの変異種が見つかったことによる英仏間の輸送制限などで大渋滞が発生した。これだけでも、業界では生産停止に追い込まれる企業が出た。
また、道路輸送は鉄鋼業界にとっても大きな需要家だ。タイヤのワイヤーからトラック、トレーラー部品に至るまで、輸送車両の材料として鉄鋼は大きな比重を占める。車両の需要は輸送量に比例するため、道路輸送が減れば鉄鋼業界もその影響を被ることになる。2008年の金融危機ではトレーラーメーカーとサプライヤーが深刻な危機に見舞われ、倒産に追い込まれたところもあった。