EU外相が対ロ追加制裁を示唆、関係悪化で相互に外交官追放

ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件をきっかけに、反体制派への弾圧を強めるプーチン政権と欧州連合(EU)の溝が深まっている。EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)は9日、欧州議会で先のロシア訪問について報告を行い、近くロシアに対する追加制裁を加盟国に提案する可能性を示唆した。今月22日の外相理事会で対ロ政策を協議する。

ボレル氏は5日にモスクワでロシアのラブロフ外相と会談し、1月に療養先のドイツから帰国した後に拘束されたナワリヌイ氏の釈放を求めた。しかし、ロシア側は同日、ナワリヌイ氏の釈放を求めるデモに参加したとして、ドイツなど3カ国の大使館員を国外追放すると発表。ボレル氏はラブロフ外相との会談中にソーシャルメディアでこの決定を知り、ロシア側に撤回を求めたが受け入れられなかった。

ボレル氏のロシア訪問をめぐっては加盟国の一部が反対していたが、同氏はロシア当局によるナワリヌイ氏の収監と反体制派への弾圧に抗議すると同時に、エネルギー政策やイランの核問題などでの協働を模索するため訪ロに踏み切った経緯がある。

ボレル氏は「今回の訪問は明らかにリスクを伴うものだったが、ロシア側には建設的な協議に応じる考えがないことがはっきりした。ロシア政府は憂慮すべき権威主義への道をたどっている」と指摘。今後の対ロ政策について「決定するのは加盟国だが、制裁も考えられる。上級代表の権限を行使して具体的な提案を行うつもりだ」と述べた。

EUは昨年10月、ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件に関わったとして、プーチン露大統領の側近を含む6人と政府系研究機関に対し、EU域内への渡航禁止や資産凍結などの制裁を発動している。

一方、ドイツ、スウェーデン、ポーランドの3カ国は8日、自国の大使館員が国外追放されたことへの報復措置として、ロシアの外交官をそれぞれ1人ずつ追放処分とした。ドイツ外務省は声明で「ロシアの決定は決して正当化されない。追放された外交官は合法的にロシアの国内情勢を観察するための行動をとっただけだ」と強く非難した。

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