V4設立30年、一定の成功あるものの西欧との開きは埋まらず

ポーランド、チェコ、ハンガリー及びスロバキアの中欧4カ国で構成するヴィシェグラードグループ(V4)は2月15日、設立30周年を迎えた。欧州連合(EU)に加盟するV4諸国は他の新規加盟国に比べ政治・経済的に成功してきたといえるものの、所得水準などは西欧との間になお開きがある。経済成長率の伸びも近年は鈍化しており、国民の間には経済の外資依存などに対する不満が高まっている。

ウィーン世界経済研究所(WIIW)のリヒャルト・グリーフェソン氏は、V4諸国の経済水準はEUの他の新規加盟国に比べ高いレベルに達しており、EUへの統合プロセスで達成されたものは多かったと話す。1993年のチェコスロバキアの分裂(「ビロード離婚」)は旧ソ連やユーゴスラビアと比較して円滑に実施された。所得水準はルーマニア、ブルガリア及び他の新規加盟国と比べ高い。一方でEU統合に対するV4諸国の国民の見方は必ずしも肯定的なものばかりではなく、ハンガリーやポーランドでは現政権下で政府の強権化が進んでいる。同氏によると、背景には社会主義から民主主義体制に移行した過去30年間の実績に対する低い評価があるという。

例として、チェコでは政治情勢は安定しているが、現在の経済体制への不満は高い。同国の成長モデルは外資頼みの輸出主導型で、内需への依存度は低い。西欧、特にドイツからの投資が盛んで、経済の多くの部分がドイツに帰属しているため、企業収益の大半が同国に還流している点が問題視されている。

ポーランドとハンガリーでは、政府の対EUの姿勢は国民以上に厳しい。過去の成果を一部の国民しか享受していないという事実が両国の現政権の立場を有利にしている。WIIWのグリーフェソン氏は、成果が還元されていないと考える人は首都以外に住む国民や教育水準の低い国民の間に顕著にみられると指摘する。こうした人々は、自国は西欧諸国を模倣しているが、同じ水準には達していないと感じている。

中東欧諸国では1990年代初頭、西側諸国同様の生活水準が達成できるという期待が非常に大きかったため、現在の失望感は大きくなっている。V4諸国の比較対象は今や「ルーマニアではなくドイツやオーストリア」だと同氏は話す。

チェコの所得水準はドイツの70%から75%にとどまる。一方で2008年の経済危機以降、成長率は低下した。ポーランドとハンガリーはドイツとの差はさらに大きい。

上部へスクロール