中国製薬大手の中国医薬集団（シノファーム）が16日、ハンガリーへの新型コロナウイルスワクチンの供給を開始した。欧州連合（EU）加盟国で同社製ワクチンを調達するのはハンガリーが初めて。EUが承認していない同ワクチンを一方的に承認し、調達したことは加盟国の足並みを乱すもので、中国の域内での影響力増大を警戒するEUとの対立に発展する可能性がある。
初回分として届いたのは全発注量500万回分のうちの55万回分。検査手続きを経て接種に移る。残りも今後4カ月で段階的に納入される見通しだ。
ハンガリーはロシア製ワクチン「スプートニクV」も200万回分発注しており、すでに接種が開始されている。オルバン首相はラジオ局の取材に対し「5月末までに680万人に接種できる」と話し、人口1,000万人弱のハンガリーで集団免疫が確保できる見通しを示した。
一方、政府の思惑通りに接種が進むかは未知数だ。シノファームのワクチンはハンガリーが1月29日、単独で緊急承認した。手続き迅速化のため、その前日の28日に布告した政令で、ハンガリー医薬品当局の審査を免除した経緯がある。このため、ただでさえワクチンに懐疑的なハンガリー国民が率先して接種を受けるとは限らない。
シノファームは第3相臨床試験の結果をまだ公表しておらず、専門家の間では、ワクチンの安全性の懸念が払しょくできないという見方が主流だ。