欧州委員会は4日、男女間の賃金格差の解消に向けた新たな法案を発表した。従業員が250人以上の企業に対し、男女の賃金格差に関する情報の開示を義務付けることが柱。欧州議会と閣僚理事会の承認を得て新ルールを導入し、加盟国はこれに沿って罰則規定などを盛り込んだ国内法を整備する。
欧州委によると、欧州連合(EU)では約半数の加盟国で賃金の透明性確保に関するルールが導入されているが、女性の賃金は同じ労働条件の男性と比べて平均14%低く、エストニア、オーストリア、チェコでは賃金格差が20%を超えている。欧州委は声明で、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による企業の業績悪化で、女性がより深刻な打撃を受けていると指摘。フォンデアライエン委員長は「同一労働・同一賃金の実現には賃金格差に関する実態の透明化が不可欠だ」と訴えた。
法案によると、従業員250人以上の企業は給与やボーナスのほか、交通費や住宅手当などを含めて男女間の賃金格差に関する情報を年次報告書で開示することが義務付けられる。また、同僚の賃金について開示を求められた場合は応じなければならない。
このほか法案にはすべての企業を対象に、採用候補者に過去の勤務先での給与を聞くことを禁止することや、差別があった場合に補償の権利を従業員に与えること、労使紛争になった場合は差別がないことの立証責任を雇用者側に負わせることなどが盛り込まれている。