欧州諸国が相次ぎアストラ製ワクチンの接種中断、EMAとWHOは継続促す

英製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンを接種した後に血栓ができて死亡する例が報告されたことを受け、欧州で同ワクチンの接種を一時停止する動きが広がっている。欧州医薬品庁(EMA)と世界保健機関(WHO)は、現時点で接種との因果関係を示す証拠はないと説明しているが、同ワクチンへの懸念を払拭できなければ、既に予定より遅れている欧州での接種計画に深刻な影響が及びかねない。

血栓による最初の死亡例はオーストリアで報告された。49歳の女性看護師がアストラゼネカ製ワクチンの接種から10日後に死亡したのを受け、オーストリア当局は7日、同じ製造ロット番号のワクチンの接種停止を発表した。デンマークも11日、ワクチン接種後に血栓ができる事例が複数報告され、うち1人が死亡したことを受けて接種の一時停止を決定。ノルウェーとアイスランドも同日、予防的措置として同様の対応を取ると発表した。

さらにブルガリアは12日、57歳の女性がアストラゼネカ製ワクチンの接種後に心不全で死亡したことを受け、同ワクチンの接種を一時停止すると発表。オランダ当局も14日、接種後に血栓ができる事例が報告されたことを受けて接種停止に踏み切った。

このほかイタリア、ルクセンブルク、エストニア、リトアニア、ラトビアは特定の製造ロット番号のワクチンの使用を停止している。一方、フランスなどは現時点で接種を中断すべき理由はないとして、継続する方針を表明している。

こうした中、EMAは11日、現時点でアストラゼネカ製ワクチンと血栓の因果関係を示す形跡はみられないとしたうえで、さらにデータを精査すると説明。約500万人の接種者に対して血栓の報告は30件と発症率は高くなく、接種による感染予防のメリットが血栓のリスクを上回るとの見方を示した。

WHOも12日、ワクチン諮問委員会が検証を行っているとしたうえで、ワクチンと血栓の因果関係は証明されていないと強調。ハリス報道官は「アストラゼネカ製ワクチンは他社のものと同様、優れている」と述べ、使用を継続すべきだとの考えを示した。

一方、EMAは12日、アストラゼネカ製ワクチンについて、急激なアレルギー症状のアナフィラキシーを製品情報の副反応の項目に明記するよう勧告したと明らかにした。英国における約500万回の接種について、アナフィラキシーが疑われる41例の報告を精査した結果、一部の事例でワクチンとの関連性がある可能性が高いと判断した。ワクチンの製品情報には既にアナフィラキシーについての警告が記載されているが、記載内容をより明確にして注意喚起を促す。

上部へスクロール