モンテネグロが対中債務返済でEUに支援要請、欧州委は肩代わり拒否

欧州委員会の報道官は12日、モンテネグロが高速道路建設のため中国から受けた融資の返済が困難になったとして、同国政府から支援要請があったことを明らかにした。欧州連合(EU)として第三国への債務を肩代わりすることはできないとしたうえで、プロジェクトを遂行するための資金支援の可能性に言及。中国の投資がもたらす社会経済および財政への影響に懸念を示し、EU加盟候補国のモンテネグロに寄り添う姿勢をアピールした。

モンテネグロがEUに支援を要請したのは、南部の港湾都市バールから隣国セルビアに続く全長165キロの高速道路建設のため、中国から受けた約10億ドルの融資の返済。欧州の銀行が事業の採算性を疑問視して融資を拒否したのに対し、一帯一路構想のもと東欧での影響力拡大を狙う中国が手を差し伸べた。英紙フィナンシャル・タイムズなどによると、モンテネグロ政府が2014年に中国輸出入銀行と交わした融資契約では土地を担保とすることが明記されており、返済できなければ中国側が相応の土地を取得できることになっている。

中国への返済は7月に始まるが、人口62万人のモンテネグロは国内総生産(GDP)の103%に相当する43億3,000万ユーロの公的債務を抱えている。新型コロナウイルス感染拡大で主力の観光業が打撃を受けており、返済は困難な状況だ。

モンテネグロのアバゾビッチ副首相は3月、EU加盟候補国が中国に依存せざるを得ない状況に陥るのを防ぐため、前政権が受けた融資の借り換えをEUが支援すべきだと主張していた。欧州委の報道官は「EUが第三国への債務を肩代わりすることはできない」と明言。そのうえで、西バルカン諸国の長期的な経済回復やEUへの経済統合などを支援する90億ユーロ規模の経済・投資計画の枠組みで、現在は完成の見通しが立っていない工事を進めるための資金支援は可能と説明。「欧州投資銀行や欧州復興開発銀行などを通じ、補助金や保証、低利融資などの形で支援する用意がある」と述べた。

上部へスクロール