●欧米で事業を行うロシア系起業家は1.7万人あまり
●これらの企業は過小評価されており、投資機会は十分
ロシアのベンチャーキャピタル(VC)、レタ・キャピタル(Leta Capital)がロシア語圏出身の企業家に注目している。同社によると、中東欧出身のロシア語話者1万7,000人あまりが企業家として欧米で事業を行っており、設立したスタートアップ企業は大きな収益をあげている。レタ・キャピタルは、これらの企業は依然として評価が低く、投資機会が見逃されているとみる。
■ロシア系新興企業は依然として過小評価
ウェブ紙『イーストウエスト・デジタルニュース』(EWDN)によると、ロシア語圏出身者が設立したVCには、アルマス・キャピタル、ガガーリン・キャピタルパートナーズ、LVL1、ルナ・キャピタル、ターゲット・キャピタルのほか、ウクライナに拠点を置くアヴェンチャーズ・キャピタル、TAベンチャーズなどがある。しかしこうしたVCは必ずしもロシア系のテクノロジー企業に投資しているわけではない。一方レタ・キャピタルは、ロシア系企業は依然として過小評価されており投資のチャンスがあるとの見方だ。
■ロンドン、ニューヨークの起業家向けに1億ドル規模の基金設立
この見解を踏まえ、同社はロンドンとニューヨークで事業を行う起業家に着目し、1億ドルの投資基金を設置する方針だ。新しい基金はビジネスインテリジェンス、ビッグデータ分析、人工知能(AI)、IT、インターネットなどの分野を対象に、シード段階からシリーズA及びBなど初期のスタートアップ企業に向けたものとなる。投資先の選定基準としては、一定のユーザー数と確かな製品を持ち、売り上げが安定していることなどを挙げる。同社によると、新基金の登記先は英領ケイマン諸島。レタ・キャピタルとして3つ目の投資基金となる。
同社は2012年に最初の基金を設立して以来、30以上のテック系企業を対象に4,500万ドルを投資してきた。18年には5,000万ドル規模の基金を立ち上げている。投資先には2017年にチューリッヒ保険に売却されたテレマティクス技術の「ブライトボックスHK」やコワーキングスペースのウィーワーク(WeWork)が取得したマーケティングプラットフォームの「ウノミー(Unomy)」などがある。
■多額の資金を必要としないテック系企業は調達額も少なめ
レタ・キャピタルによると、ロシア語圏出身の起業家が設立した企業の米国企業への売却額は、Veeamソフトウエア(50億ドル)、マジックラブ(30億ドル)、ルクソフト(Luxoft、20億ドル)などの事例があった2019年のみで105億ドルに上る。またシード段階からラウンドBまでの資金調達を行ったロシア語圏出身者の調達額は米国の起業家の調達額よりも65%少なかったが、英国と欧州連合(EU)の起業家に比べると40%多かった。
コンサルティング会社アーネストヤング(EY)とEWDNが行った調査によると、ロシア語圏出身者が起業したスタートアップは米国や西欧で事業を行っていることが多い。多額の資金を必要としないデジタル技術に関連した企業が多いため、調達額は少なくなる傾向にある。