●天然ガス販売の減少をブルー水素輸出で補う狙い
●ロシアは30年までに世界水素市場シェア20%の獲得を目指す
ロシアのエネルギー大手国営ガスプロムが、天然ガスの代替燃料として「ブルー水素」を中長期的に欧州に輸出することを検討している。欧州連合(EU)が温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロ(ゼロエミッション)とすることを目指していることに応じたもので、天然ガス販売の減少をブルー水素輸出で補う狙いがある。4日付のロシア・トゥデイが報じた。
ブルー水素は水素生産の過程で排出される二酸化炭素(CO2)を回収・地中貯留(CCS)し、排出量を実質ゼロにするもの。ガスプロムで輸出事業を担当するガスプロム・エクスポルトのセルゲイ・コムレフ社長によると、現時点でも1キロ当たり約2米ドルで生産可能とみられている。
ロシア政府のゼロエミッション水素戦略では、2023年から既存の天然ガス生産プラントでCCS設備を併設した水素生産施設を稼働させる予定だ。その後、原子力と再生可能エネルギーを電源とした水電解施設の運用試験を実施することになっている。
ロシア政府は昨年、水素生産に関する指針を公表した。これにはブルー水素のほか、◇CO2が大気中に排出されるグレー水素◇メタンを熱分解するターコイズ水素◇再生可能エネルギーを使った水電解で生産されるグリーン水素――が含まれる。今年4月には、2030年までの目標として、世界の水素市場で20%のシェアを獲得する方針を打ち出した。30年以降も輸出を伸ばし、50年までに輸出を量ベースで年3,340万トン、金額ベースで同1,002億ドルに引き上げることを目指す。