モスクワ地下鉄、顔認識乗車システムを導入

●「フェイスペイ」はカメラを見つめるだけで入場可能

●顔情報が保安用途に流用される懸念も

モスクワ地下鉄で15日、顔認識による乗車システム「フェイスペイ」が稼働した。専用改札でカメラに向き合えば入場できる簡便さで、モスクワ市当局では3年以内に旅客の最大15%がサービスを利用すると予測する。一方、顔情報が保安用途に流用される懸念も出ている。

「フェイスペイ」を利用するには、モスクワ地下鉄サイトで電話番号、決済口座情報、最近撮った写真のデータをアップロードして登録する必要がある。その後は改札でカメラを見つめるだけで乗車できる。マスクをしていても認証されるという。料金は直接口座から引き落とされる。

一方で、ITの進化で市民の監視強化につながるという懸念も高まっている。すでに、新型コロナ感染者が隔離措置に従わず外出したところを顔認識カメラで見つけて罰した例があるほか、反政府活動家ナヴァルニ氏を支持するデモに参加した人が、「顔認識で特定され逮捕された」と証言している。

人権保護活動家でIT専門家のミハイル・クリマレフ氏は、「国営企業を中心に、顧客から生体認証(バイオメトリクス)情報の提供を求めるところが増えている。声紋認証を目的に声を録音することさえある。ハッキングや詐欺の予防が目的とされるが、同じ技術で市民をすき間なく監視できることも確かだ。特にデータが一カ所に集められ、当局が呼び出すことができるようになれば、ジョージ・オーウェルの小説『1984』が現実となる」と警鐘を鳴らしている。

モスクワにはすでに監視カメラが20万台以上設置されている。このうち、顔認識機能を備えているものがどれほどあるのかは公表されていない。ただ、近い将来、全てのカメラが同機能を持つようになると予想されている。

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