●LFP電池のギガファクトリーを建設し、将来的に年16GWhを生産
●EITイノエナジーは持続可能なエネルギー開発支援を目的とする
リン酸鉄リチウム(LFP)電池の開発を手がけるセルビアのイレヴネス(ElevenEs)は21日、欧州連合(EU)系の投資機関EITイノエナジーから、巨大工場(ギガファクトリー)建設に向けた資金を調達したと発表した。具体的な金額は明らかにしていない。第1段階として、既存施設を活用し、2023年までにLFP電池を年300メガワット時(MWh)生産する体制を整える予定だ。その上で24年に新工場の建設に着手し、年産能力8ギガワット時(GWh)を整備する。将来的には16GWhへの強化を計画している。
イレヴネスは2019年10月、アルミ包装材大手AIパックがLFP電池開発部門を分社化する形で設立したエンジニアリング企業だ。ハンガリー国境に近いスボティツァに拠点を置く。今年7月には研究開発(R&D)拠点を開設していた。
工場では、LFP電池及び蓄電システムの独自製法を実用化する。製法開発では、AIパックのアルミ包装工程のノウハウが大いに役立ったという。24年から建設する新工場は、電力需要をすべて再生可能エネルギーで賄う見通しだ。
イレヴネスのネマニャ・ミカチ最高経営責任者(CEO)は「LFP電池は競合技術に比べて寿命が2倍以上と長く、最大6,000回チャージが可能だ。かかる時間も短く、繰り返しフル充電できる。価格もずっと安い」とその長所を強調している。
EITイノエナジーは、欧州イノベーション技術機構(EIT)の一部門。持続可能エネルギー分野の研究開発・実用化を支援する目的で、アーリーステージ(起業直後)のスタートアップに投資している。
セルビアは世界でも有数のリチウム埋蔵国といわれる。英豪系リオ・ティントは西部ヤダルのホウ酸リチウム鉱床の開発に24億米ドル(20億6,000万ユーロ)を投資し、炭酸リチウムおよびホウ酸、硫酸ナトリウムを生産するプロジェクトを進めている。