クロアチア、イタリアとの「ワイン戦争」譲らず

●伊発泡ワイン「プロセッコ」の商標巡り係争が続く

●クロアチアは自国ワイン「プロセク」の商標登録を求める

イタリアのスパークリングワイン「プロセッコ(Prosecco)」の商標をめぐり、クロアチアとイタリアとの間で紛争が続いている。クロアチア政府は7月、欧州委員会に対し、プロセッコの自国の表現である「プロセク(Prosek)」を欧州連合(EU)域内の商標として認めるよう働きかけを始めた。イタリアは猛反発しているが、クロアチア側は取り下げる気配をみせていない。

イタリアの「プロセッコ」はスロベニアとの国境に位置するアドリア海沿いのトリエステにあるプロセッコという地名に由来する。同地名はスロベニア語では「プロセク」となり、旧ユーゴスラビア全域でも同様に呼ばれている。

クロアチアは2013年のEU加盟後、ダルマチア地方の甘口ワイン「プロセク」の国際承認を求めてEUの場で主張を開始した。しかしイタリアの「プロセッコ」と名称が著しく類似していることから欧州委員会はその登録を拒んできた。

クロアチアは、「プロセッコ」と「プロセク」は同じワインではないとし、国として「プロセク」の伝統的な意味が欧州全土で認知されるよう求める法的、歴史的、文化的な正当性があると主張している。「プロセク」はすでに数百年間生産されており、18世紀以来デザートワインとしてその名称が用いられてきたというのが根拠だ。

一方イタリアは「プロセッコ」の商標を域内で独占的に保持してきた。EU域内ではトリエステを含むベネチア地方以外で生産された製品が同様の名称を用いることが禁止されている。同国の農業団体コルディレッティは、クロアチアの主張は我々の製品に対する攻撃だとし、「プロセッコ」は世界で最も多く輸出され、模倣もされてきたと主張している。

「プロセッコ」の生産地であるイタリア北部は原産地の呼称保護を目的とした同国の食品認定制度DOCGの認定を2009年に受けているほか、「プロセッコ」の生産地であるトレビソ県のコネリアーノとヴァルドッビアーデネの両地域は2009年にユネスコの世界遺産に登録されている。

EUでは過去にも商標をめぐる紛争が引き起こされてきた。オーストリアとスロベニアはソーセージの1種である「ケーゼクライナー」と「クライナー・ソーセージ」に関する問題を抱えている。イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州はハンガリーの高級ワイン「トカイ(Tocai)」の名称を巡り13年間の係争の末敗訴し、以後「フリウリ(Friulano)」の名称を用いている。

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