●電力需要の70%を原発に依存する同国、新規着工は2007年以来
●欧州加圧水型炉(EPR)を最大6基新設する方向で検討
フランスのマクロン大統領は9日、国内で原子力発電所の建設を再開すると発表した。エネルギー資源の海外依存度を下げながら電力を安定的に供給し、同時に気候変動問題に対応するため、原発を活用する必要があると訴えた。
フランスは電力需要の70%を原発に依存しているが、国内での新規着工は2007年以来となる。マクロン氏は国民向けのテレビ演説で、「フランスがエネルギー自立と電力の安定供給を確保し、50年までに温室効果ガス排出量を実施ゼロにする目標を達成するため、数十年ぶりに原子炉建設を再開する」と表明。欧州で天然ガス価格の高騰に伴い、電気代やガス代が値上がりしている現状に触れ、外国に依存せずに適正な価格でエネルギーを安定的に供給しながら脱炭素かを進めるには、気象条件に左右される再生可能エネルギーだけでなく、原発への投資が不可欠だと強調した。
AFP通信などによると、仏政府は欧州加圧水型炉(EPR)を最大6基新設する方向で検討を進めており、数週間以内に計画の具体的な内容が発表される見通し。マクロン氏は10月、国内産業の再興に向けた総額300億ユーロの投資計画の一環として、10億ユーロを投じて30年までに小型モジュール原子炉(SMR)を複数導入すると表明している。SMRは従来の原発より発電規模が小さく、冷却しやすいことから安全性が高いとされ、建設費用も抑えられる。
東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、欧州で脱原発の動きが広がる中、オランド前政権は15年、原発依存度を25年までに50%に引き下げる目標を法制化した。マクロン氏は18年、電力の安定供給を確保するため原発稼働を継続すると表明。依存度50%の目標は維持したまま、達成期限を35年に設定し直し、国内に58基ある原子炉のうち14基を同年までに廃炉にする方針を打ち出した経緯がある。