●σホールは約30年前に理論的に存在が証明
●インパクトはブラックホールの観察例に匹敵
チェコ全国の科学者・研究者から成る学術チームが、これまで理論上の存在しか証明できなかった「σ(シグマ)ホール」を世界で初めて観測することに成功した。原子よりも小さい亜原子粒子の研究における画期的な出来事として注目される。その成果は米サイエンス誌の11月12日号に掲載された。
σホールは、ハロゲン族元素(第17族元素)の単原子上の非対称電子密度分布を指す。約30年前に理論的に存在することがわかったが、確認はできていなかった。学術チームは今回、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)の感度を調整し、解像能力を格段に高めることに成功。初めて「目で見る」形で存在を証明した。
チェコ科学アカデミー有機生物化学研究所のパヴェル・ホブザ教授は「理論で分かっていたσホールの存在と形状が我々の実験によって検証できた」と満足感を示した。そして、「非共有結合性相互作用が、生物学だけでなく材料工学でも主要な役割を果たすことが分かったのは非常に重要だ」と指摘した。
理論で先に存在が予想され、後に実際に観測した例としてはブラックホールの例がよく知られる。このため、チェコ科学アカデミーのパヴェル・イェリーネク氏は、今回の成功が「原子物理学における画期的な出来事と言ってよい」と胸を張っている。