●中国が同国に対する圧力を高めている動きの一環
●輸入停止に伴う直接の損害はない=リトアニア当局
中国政府は10日、「書類の不備」を理由にリトアニアからの牛肉輸入を停止した。リトアニアにおける事実上の台湾大使館設置を発端として、中国が同国に対する圧力を高めている動きの一環とみられる。
リトアニアは昨年11月、中国からの圧力にも関わらず、台湾に対し事実上の大使館に当たる「台湾代表処」を首都ビリニュスに開設することを承認した。これを受けて中国はリトアニアとの外交関係を格下げしたほか、同国産の物品の受け取りを拒否した。また、リトアニアから部品を調達する欧州企業にサプライチェーンの見直しを迫った。
欧州連合(EU)はリトアニアと中国との二国間交渉で問題が解決できなかったとして先月、世界貿易機関(WTO)に「中国がリトアニアを貿易において差別している」として提訴した。これまでに米国、英国、豪州、カナダがEUを支持する姿勢を明らかにしている。リトアニアのガブリエリュス・ランズベルギス外相は9日、訪問中の豪州で「理念を共にする国々は、さまざまな手段や規定を用いて」貿易を報復手段に使う国々に「強要」が役に立たないことを思い知らせることができる、と話し、中国の圧力に屈しないよう呼びかけた。これが牛肉輸入停止の直接的なきっかけになった可能性もある。
リトアニア食品畜産局は輸入停止に関連し、「中国から何らかの情報やデータが不足しているという通知を受けていない」と発表している。また、イングリダ・シモニテ首相によると、年初以来、中国へ牛肉を輸出していないため、国境で製品が立ち往生するというような直接の損害はないという。中国関税統計によると、昨年のリトアニア産牛肉輸入量は約775トンで、輸入総量236万トンからみるとその比率は多くない。