●欧州大手企業のロシア撤退が一段と進んだ形
●「サハリン2」参加の日本企業も対応を迫られる
英蘭系石油メジャーのシェルが2月28日、天然ガス世界最大手のロシア・ガスプロムとの提携を解消すると発表した。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた判断で、欧州大手企業のロシア撤退が一段と進んだ形だ。同じようにロシア事業を展開してきた仏トタルや米エクソン・モービルへの圧力が高まるのは避けられない。
シェルは、ガスプロムおよびその子会社との合弁事業を全て停止する。石油・天然ガス採掘及びガス液化プロジェクトの「サハリン2」やバルト海パイプライン「ノルド・ストリーム2」などが対象となる。シェルによれば同社の保有するロシア資産(昨年末現在で約30億米ドル)は、減損処理を行うことになる。
米『ニューヨークタイムズ』紙は欧米石油大手のロシア撤退について「欧米・ロシア企業の双方に大きな問題をもたらすことは確か」と指摘する。そのうえで、ロシアがクリミア半島を併合した2014年以来、欧米によるロシア資源開発が大きくペースダウンし、地球温暖化対策の流れで化石資源の重要性が縮小しつつあるため、10~20年前に撤退していた場合に比べると痛手は小さいという見方を示している。ロシア資源企業についても、これまでの提携を通じて身に着けた能力で事業を継続できるという予想だ。
■日本の対応にも注目
シェルがサハリン2から撤退を発表したことを受け、同プロジェクトに参加する日本企業も対応を迫られている。三井物産(出資率12.5%)と三菱商事(10%)は1日、「シェルの発表内容を精査し、政府及び提携先と状況を検討していく」という姿勢を明らかにした。
また、荻生田経済産業相は同日、国有企業である「石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、日本貿易保険(NEXI)が関係するロシアのエネルギープロジェクトについて、先進7カ国(G7)及び他の国々との協議に基づき適切な処置をとる」と言明した。
JOGMECと三井物産の企業連合、日本アークティックLNGは北極圏ギダン半島におけるガス田開発・LNGプロジェクト「アークティックLNG2」に10%出資している。