ウクライナ東部情勢、悪化すれば供給網に支障

●エネルギーだけでなく、穀物や資源も不足する危険

●「EU加盟国の中では特にドイツの受ける打撃が大きい」=米識者

ウクライナ東部情勢の悪化で値上がりするのは石油や天然ガスだけではない。アナリストらは、ロシアとウクライナが供給元となっている穀物や資源も不足する危険があると指摘する。供給が滞れば食品価格の高騰や工業製品の減産など、あらゆる分野に影響が及ぶためだ。

ウクライナは昔から「欧州の穀物庫」と言われる農産地帯で、ロシアと合わせて世界小麦貿易の約29%を占めている。調達プラットホームを運営するキールヴァ―(アイルランド)のアラン・ホランド最高経営責任者(CEO)は、「ウクライナの生産する小麦、大麦、ライ麦に欧州は大きく依存している。収穫期はまだ先だが、軍事衝突が起こったり厳しい制裁措置が発動されたりすれば、秋には欧州のパン価格が上昇する」と話す。購買責任者のネットワーク組織である米ソーシング・インダストリー・グループ(SIG)のドーン・トゥーラ会長は、中国や中東・アフリカ地域の食料調達でもウクライナの重要性が高いと指摘する。

また、ホランドCEOによると、肥料は製造工程でエネルギー消費が大きく、ロシアからの石油・ガス調達が滞れば欧州の肥料生産に支障が出て肥料不足を引き起こすリスクもある。

ウクライナは資源、化学製品、輸送機械などの生産国でもあり、ロシアも銅、ニッケル、プラチナなど資源の重要な供給国だ。ニッケルは電動車(EV)向けバッテリーの主要材料であり、銅は電子機器や住宅建設に欠かせない。米国は半導体の製造に必要なネオンの90%以上をウクライナから、パラジウムの35%をロシアから調達しているという。

「欧州連合(EU)加盟国の中では特にドイツの受ける打撃が大きい」と、リスクインテリジェンス技術の米サプライ・ウィズダムのアトゥル・ヴァシスタCEOはみる。ドイツが製造・発電に必要な天然ガスをロシアから調達しているためだ。「戦闘や制裁で混乱が増せば、ドイツの製造業が減産に追い込まれ、これが他国の製造業に波紋を広げる」と分析している。

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