2022/3/9

自動車

ロシア向けの半導体、インド自動車産業に供給か

この記事の要約

●恩恵を受けるのは欧州と韓国の自動車メーカー●延びに延びた納期の大幅な短縮につながる見込みロシア・ウクライナ戦争が、欧州および韓国自動車メーカーのインド拠点に思いがけない恩恵をもたらしそうだ。欧州メーカーがロシア現地生産 […]

●恩恵を受けるのは欧州と韓国の自動車メーカー

●延びに延びた納期の大幅な短縮につながる見込み

ロシア・ウクライナ戦争が、欧州および韓国自動車メーカーのインド拠点に思いがけない恩恵をもたらしそうだ。欧州メーカーがロシア現地生産を停止したことで、本来はロシアに供給されるはずだった半導体がインドなど他の新興諸国へ運ばれる可能性があるためだ。これが現実となれば、少なくとも短期的に半導体不足が緩和されるとみられている。

インドでは起亜自動車、現代自動車、シュコダ自動車、フォルクスワーゲン(VW)、ルノー、メルセデスベンツなどが工場を操業する。乗用車需要が急速に拡大しているものの、半導体不足で生産の一時停止を余儀なくされ、納期は最長で10カ月に延びている。半導体が十分に供給されていれば、昨年の国内自動車販売高は50億米ドル多くなっていたという推測もあるほどだ。

ロシアはルノーとシュコダ自にとって国別で2番目、起亜自にとっても4番目に大きな市場だ。ロシア向けだった半導体が新興諸国に供給されれば、生産台数増加に直結するだろう。インド市場ではいくつかの企業が新モデルを他国に先駆けて発売しており、インドが代替供給先として優先されるかもしれない。

インドへの半導体供給量が増えれば、特に起亜自と現代自のメリットが大きい。インドで急速に伸びているSUVで両ブランドのシェアが高いからだ。起亜自は開戦前、今年のロシア販売台数で24万1,000台(全販売台数の7.5%)、インドで24万3,000台を予想していた。半導体不足のため、インド販売モデル4種のうち3種の納期が40~60週間に上っており、半導体の供給増は即、販売増を意味する。

現代自は今年のロシア販売台数を21万4,000台(全販売台数の5%弱)と見積もっていた。インドでは昨年51万5,000台を売り上げたが、人気モデルの「クレタ(Creta)」の納期は現在10カ月と、やはり長い。

S&Pグローバル・モビリティのインド自動車市場アナリスト、ゴラフ・ヴァンガール(Gaurav Vangaal)氏は「ウクライナ戦争でインドが得をするか損をするかは、いつまで戦争が続くかにかかっている。戦争が長引けば、半導体がインド以外の地域に供給されるかもしれないし、サプライチェーンが機能不全に陥ってインドへの供給が滞るかもしれない」と話し、長期的にはインドも損害を被りかねないという見方だ。