●半導体不足による減少分だけでも世界全体で350万台に
●新車の販売価格上昇にも拍車がかかる見込み
ウクライナ戦争で世界の新車生産が数百万台単位で減少する可能性がある。現地生産してきた外国企業が工場の操業を停止したロシアではもちろん、戦争が長期化すればするほど自動車産業全体に影響が及んでいきそうだ。
ロシアがウクライナに侵攻して2週間も経たないうちに、欧州メーカーでは、すでにワイヤーハーネス調達に支障が出ている。ウクライナが主な生産国の一つであるためだ。また、開戦前から不足気味の触媒コンバータや半導体も、原料や、工程に必要なガスの供給をウクライナやロシアに頼っており、英IHSマークイットでは半導体不足による減少分だけで世界生産台数が350万台減ると推測する。
英調査会社LMCオートモーティブは、欧州生産台数の減少幅予測を70万台に上方修正した。紛争地域に近い欧州メーカーがまず最初に打撃を受けているという。
米オートフォアキャスト・ソリューションズは、ロシアとウクライナの生産台数が昨年の半分に当たる80万台前後に落ち込むと予想する。撤退する側の外国メーカーをみると、他業界に比べてロシア事業の比重が小さく、影響は限定的となりそうだ。IHSによると、ロシアで相当数を現地生産する外国自動車メーカーは、◇ロシアのアフトワズを傘下に持つ仏ルノー(ロシア生産台数におけるシェア39.5%)◇韓国・現代グループ(27.2%)◇独フォルクスワーゲン(VW、12.2%)◇トヨタ自動車(5.5%)――ぐらいしかない。ロシア事業の重要性が低かったため、たとえ戦火が収まったとしても、一旦撤退した企業がロシアにすぐ再進出することはなさそうだ。
販売事業では、半導体不足で需給バランスが崩れ、ただでさえ価格が上昇しているところにウクライナ戦争が重なり、車体価格の最高記録更新に拍車がかかるとみられている。