●ロシアは黒字確保のための重要市場
●撤退する競合の多い中、仏政府も生産再開を支持
仏ルノーが21日、モスクワ工場の操業を再開した。ロシアのウクライナ侵攻を機に、競合の多くがロシア事業から撤退しているのと相反する動きだ。ロイター通信によると、筆頭株主であるフランス政府も生産再開の判断を支持しているという。
ルノーは先月、欧米の対ロシア制裁で物流に支障が起きているとして同工場の操業を停止した。業界を問わず、ロシア事業を継続する欧米系企業への風当たりが強まるなか、今回、操業を再開したのには、ロシアがグループ業績に大きく貢献しているという事情がある。
ルノーは2007年、ロシア自動車最大手のアフトワズに資本参加。16年末に追加投資し、全株式のおよそ3分の2を握る。現地従業員数が4万人に上るなど、他の欧州メーカーに比べてロシア事業の規模が大きい。
アフトワズの21年販売台数は約38万5,000台で、税引き前利益で1億8,600万ユーロ、純利益で1億6,600万ユーロを稼ぎ出した。他のグループブランドを含めたロシア販売台数は48万2,000台で、グループ全体の約17.9%を占めている。ロシア事業がなければ、ルノーが連結決算で黒字を確保できない可能性もある。プーチン大統領が、撤退企業の資産没収の合法化に動いていることも悩みを深くしている。
ただ、ロシア事業を継続すれば欧米などでのイメージ低下は避けられず、販売台数に影を落とす可能性もある。いずれにしても、ロシアのウクライナ侵攻がルノーの痛手になるのは間違いない。
■アフトワズ工場は部分操業
アフトワズは21日、トリヤッチ、イジェフスク両工場を25日まで部分的に操業停止すると発表した。半導体部品の不足が続いているためだ。今月に入り、アフトワズでは断続的に減産を強いられている。
イジェフスク工場では「ラーダ」のほか、国内向けにダチアブランドの「ロガン」と「サンデロ」を出荷している。