●現在は全店舗の売却先を模索中
●同社にはかねて軍事侵攻に対する態度があいまいだとの批判
米マクドナルドが16日、ロシア完全撤退を発表した。3月の850店舗閉鎖からさらに踏み込んだ判断だ。撤退理由として、ウクライナ戦争によって「人道的危機」が引き起こされていること、そして「事業環境の見通しが立たない」ことをあげた。同社は現在ロシアで、全店舗の売却先を模索している。また、商標である黄色の「M」マークも近く撤去を開始する予定だ。
マクドナルドは、やはり16日に撤退を明らかにした仏ルノーと同様、ロシアのウクライナ侵攻に対する態度があいまいだとして強い批判を受けてきた。3月の営業停止も、ソーシャルネットワーク(SNS)で「ボイコット」の呼びかけが広まってから実施した。このため、「グループの価値観と相容れない」という撤退理由を疑う声も出てきそうだ。
マクドナルドの売上に占めるロシア・ウクライナの割合は昨年、およそ9%だった。ウクライナでも戦争のため108店舗を休業しているが、従業員全員に従来通りの賃金を払っている。ロシア従業員については、売却まで賃金を支給する。
マクドナルドは1990年、西側ブランドに市場を開くソ連政府の判断を受けて、モスクワに第一号店を開いた。それは歴史の区切りを印象付けるものとなったが、今回の撤退も同じような効果を持ちそうだ。