チェコとスロバキア、ヒートポンプや断熱工事に助成

●チェコはヒートポンプ導入に4,000ユーロを限度に助成

●スロバキアは断熱工事支援にEUの復興基金から5億ユーロを拠出

チェコとスロバキアで天然ガス料金が急上昇している。需要のほぼ全量をロシアからの輸入に頼っていたことで、ウクライナ戦争の影響の直撃を受けた形だ。ロシアへの依存、そしてガスへの依存を縮小するため、ヒートポンプ導入や家屋の断熱改修が検討されているほか、原子力発電容量の拡大にも期待が寄せられているもようだ。

チェコとスロバキアの一般世帯は数十年にわたって天然ガスで暖房してきた。ウクライナ戦争勃発以来、ガス料金は上昇の勢いを増し、一人暮らし用アパートの前払い額が月々200~300ユーロに達した。特に低所得世帯では、これが頭痛の種となっている。

チェコではヒートポンプの導入を考える世帯が大幅に増えた。ヒートポンプの運転・維持コストがガス料金より2~3割安いためだ。石炭や木材など、他のエネルギー源も高くなっているため、ヒートポンプへますます注目が集まることとなった。

チェコでは政府が4,000ユーロを限度に助成を実施している。低所得世帯なら限度額を超えない限り、ほぼ全額を助成でまかなえるという。ヒートポンプシステムの設置を取り扱う業者によると、昨年に比べて需要が急激に増え、多くの業者で数カ月先まで予定が埋まっているという。

一方でスロバキアは助成予算が1,500万ユーロにとどまり、普及を後押しする効果が小さい。このため、高いガス料金を払い続けるしかない世帯が多い。

家の断熱も暖房費圧縮に効果がある。チェコ政府は、低所得世帯に対し、屋根、屋根裏、外壁などの断熱工事や窓・ドアの交換の費用を支援する方針で、4,000万ユーロの予算を組んだ。スロバキア政府はEUの復興基金から5億ユーロを断熱工事支援に拠出する。9月から助成がスタートする予定だ。ただ、断熱材は輸入に頼っているためコストが高く、現状ではヒートポンプの方が費用対効果で優れているという声もある。

これらの対策が進んだとして、エネルギー支出の上昇分を相殺するだけの効果しか期待できない。ロシアからのガス禁輸を実現するにはさらなる措置が必要だ。そこで両国の議会では原子力利用が解決策と訴える議員もある。チェコは2036年までに出力2,400メガワット(MW)分の原子炉を新設する計画だ。スロバキアではモホフチェ原発で年内に3号炉が、来年に4号炉が稼働する見通し。出力は合わせて940MWに上る。

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