ウクライナ侵攻以来、西側企業が次々に撤退したロシア。その穴を埋めるために国内企業が「ピンチヒッター」として生産を開始している。
コミ共和国の飲料メーカー、スィクティヴカルピヴォではコカ・コーラならぬ「コミ・コーラ」を出荷し始めた。赤の背景に白いキリル文字で「コーラ」の文字が躍る。ビンのフタも赤く、コカ・コーラのデザインをパクっているのは明らかだ。
伝統的な発酵飲料クヴァスを販売するオチャコヴォも、コーラ、スプライト、ファンタの代替品を発売した。名前はそれぞれ「クールコーラ」、「ストリート」、「ファンシー」で、すぐに御本家が思い浮かぶデザインだ。ちなみに、オチャコヴォによればコカ・コーラのロシア事業停止後も「本物」は買えるが、価格が2倍に高騰しているという。
化粧品や洗剤でもカザンやノヴォシビルスク、オムスク、ノヴゴロドなどの企業が代替品を発売している。ただ、これらの製品は「グリーンラブ」、「ブリッツ」、「ホームグノム」など西欧をほうふつさせる名がつけられている。
政府は西側ブランドの撤退が「国産化」のきっかけになると宣伝しているが、短期間に大量の企業が姿を消したため、全ての分野でこれを補うのは難しい。マクドナルドだけでも閉鎖された店舗数は850店近くに上る。
業界によっては他の「外資系」企業がロシア進出を図っている。衣料品業界がその一つで、「H&M」や「ザラ」が去った後にトルコや中国、インド、イランの企業がこぞってロシア市場に切り込もうとしているようだ。
一方、「輝かしいソ連の伝統」を復活させる動きもある。仏ルノー撤退後、そのロシア工場でモスクビッチ・ブランド車を生産する計画が浮上した。
モスクビッチの歴史は1930年代にさかのぼる。手ごろな価格のファミリーカーとして人気があったが、体制転換後の2006年に破産した。しかし、「過去の栄光」のうち、よみがえるのは「過去」だけのようだ。西欧から部品が輸入できなくなったため、安全性能が大きく削られそうだからだ。果たして「ソ連性能」の自動車に消費者が満足するのか。ふたを開けてみてからのお楽しみだ。