ウクライナの孤児~ポーランド

ロシアがウクライナに侵攻して4カ月が経った。ポーランドには多くのウクライナ人が避難しているが、そのなかには孤児も含まれている。その正確な数はわからないが、専門家らによると推定1万5,000人超に上るという。

開戦後、しばらくの間は民間の助け合いですべてが動いていた。非政府機関(NGO)が鉄道やバスを使って1度に40~50人の子どもを戦地からポーランドへ連れてきて、それを自治体が受け入れ、地域の休暇施設に引き取った。近所の人はジャガイモなどの食料、紙おむつなど、ありとあらゆる必需品を届けた。

宿泊場所としてはホテルのほか、空いている事務所を避難所として整備したり、やはり空き家となっていた孤児院を寄付金で補修して住めるようにしたケースもある。

しかし、時間が過ぎるうちに問題点も明らかになってきた。皆が「今すべきこと」を自発的にこなしていたため、誰にどのような責任があるのかがはっきりしないのだ。そのため、責任の所在をめぐって中央政府と地方自治体、NGOの間にまさつも生じてきている。

孤児をめぐる問題としては、普通の子どもと違って訓練などの手当てや支援が必要なケースが多いことがある。また、戦争を目の当たりにした子どもには専門家による心理カウンセリングも要る。それを誰が手配するのか、どこからお金が出るのか、現状では不明だ。

加えて、孤児の扱いをめぐるポーランドとウクライナの違いもある。ポーランドは欧州連合(EU)に加盟したことで、養育グループの人数上限が引き下げられ、なるべく少人数、なるべく里親のもとで育てる方針に転換した。一方、ウクライナでは赤ちゃんからティーンエージャーまで、100人を超える子どもたちが1つの施設で暮らしていることもある。

ポーランド家庭省は、ウクライナ社会省が孤児院単位での養育を望んでいることに加え、児童養護基準が「ポーランド国籍」の子どもにのみ適用されるため法に抵触しないとして、当面はグループを分けない姿勢を示している。児童保護の専門家は、「大人数ではきめ細かい世話ができない」、「性的暴力も含めて虐待が起こりやすい」などとして、この立場に反対している。

ウクライナ社会省が孤児たちのグループを分割したくない理由には、子どもたちが帰国できる状況を作っておきたいという気持ちがあるようだ。2014年のウクライナ東部戦争では1万2,000人の行方がわからなくなり、いまでもその居場所がわからない。このため、どこに誰がいるのか把握しやすい形にしておきたいという意向なのだという。

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