●昨年は同国産ガスを45億立方メートル調達する15年契約を締結
●政府は一般世帯向けのガス・電力料金助成に上限を設定
欧州連合(EU)加盟国の多くがロシアからの天然ガス調達削減を試みるなか、ハンガリーは逆に輸入を拡大しようとしている。ペーテル・シーヤールト外務貿易相は21日、冬の需要に備えた調達増についてセルゲイ・ラヴロフ露外務相と交渉するため、自らモスクワへ赴いた。ロシア側はハンガリーの意向を検討すると表明している。
シーヤールト外務貿易相はツイッターで訪ロの目的を「ハンガリーにおける天然ガス供給を確実にし、ウクライナにおける戦争を平和的に解決するため」と説明した。ハンガリーは昨年にも、ロシアから天然ガスを合計45億立方メートル調達する15年契約を結んでいる。
中立的なハンガリーのエネルギー専門家らは、政府は新たな調達量確保に向けて目立たない形で準備を進めてきたが、閣僚級政治家の訪ロを強く求めるロシア側に譲歩して、今回、外務貿易相をモスクワに送ったと推測している。
なお、ハンガリー政府は外相会談に先立ち、一般世帯向けの天然ガス・電力料金助成に上限を設ける政令を発布した。来月からは一定量まで助成による割引料金が適用され、これを超えると大幅に高くなる。
ガス料金は一世帯当たり年1,729立方メートルまで、1立方メートル当たり102フォリント(0.25ユーロ)、これを超えると747フォリントとなる。電力は2,523キロワット時まで1キロワット時あたり36フォリント、超過分は70.1フォリントとなる。政府は、それでも市場価格より安いと説明している。
エネルギー助成はヴィクトル・オルバン首相の主要政策の一つで、同首相の人気に大きく貢献してきた。同制度を担当するシラールド・ネーメト政府委員は、「戦争の長期化や、(対ロシア)制裁政策を含むEUの誤った対応がエネルギー市場にも影響するのは明らか」として、エネルギー高騰の責任がEUにあると批判している。(1HUF=0.35JPY)