●世界的なワクチンの供給不足に対応するための一時的措置
●皮内注射は副反応が起こりやすい特徴も
欧州医薬品庁(EMA)は19日、ウイルス感染症「サル痘」のワクチンについて、承認されている皮下注射より浅い部分に少量の薬液を注入する「皮内注射」を容認する方針を発表した。世界的なワクチンの供給不足に対応するための一時的措置。従来の方法に加えて皮内注射を採用することで、より多くの人に接種機会を提供することができると説明している。
EMAによると、約500人の成人を対象とする臨床試験で、2種類の接種方法で4週間の間隔を空けてそれぞれ2回ずつワクチンを投与したところ、皮内注射で従来の5分の1の量(0.1ミリリットル)を投与した場合も皮下注射と同等の免疫反応が得られた。このため、EMAは「ワクチン供給が限られている間、各国当局は一時的措置として皮内注射を採用することができる」と結論づけた。
ただし、皮内注射では接種部分の赤みが長く続いたり、皮膚の変色や肥厚といった局所反応が起こりやすいと指摘。また、正しく接種が行われるよう、皮内注射の経験がある医療従事者のみが接種作業にあたるよう推奨している。
欧州で5月に今回のサル痘の流行が始まって以降、これまでに世界で約3万9千人の患者が確認された。国別では米国が最多の約1万3,500人。米疾病対策センター(CDC)によると、感染者の98%は男性で、うち90%以上が他の男性との性的接触があるとされる。
欧州委員会は7月、EMAの勧告を受け、デンマークのバイオ医薬品企業ババリアン・ノルディックが開発した天然痘ワクチン「インバネックス」をサル痘予防用として使用することを承認した。ただ、世界的なワクチン不足が懸念されており、米食品医薬品局(FDA)は今月9日、従来の5分の1を投与する皮内注射に対して緊急使用の許可を出している。