2022/9/14

総合・マクロ

中東欧諸国、賃金上昇が物価上昇に追いつかず

この記事の要約

●賃金・物価スパイラルに陥るリスクは低い=英調査会社●労働組合が弱い同地域では高インフレが賃金の低下につながる英調査会社のオックスフォード・エコノミクスは5日、中欧4カ国とルーマニアの賃金上昇率は高いものの、それが物価の […]

●賃金・物価スパイラルに陥るリスクは低い=英調査会社

●労働組合が弱い同地域では高インフレが賃金の低下につながる

英調査会社のオックスフォード・エコノミクスは5日、中欧4カ国とルーマニアの賃金上昇率は高いものの、それが物価の上昇に転化されるいわゆる賃金・物価スパイラルに陥るリスクは低いとする報告書を発表した。経済が回復基調にあり労働市場の需給がひっ迫している一方、欧州経済の悪化とともに、金融引き締め政策の継続によって通貨安とならず、景気も後退してインフレ圧力が弱まるとの見通しだ。

中東欧諸国の名目賃金上昇率は2021年後半から今年1ー6月期にかけて加速し、6月には2桁の上昇率となった。国別ではハンガリーが15.4%で最も高く、ポーランドが13%、ルーマニアが11%で続いた。チェコとスロバキアはそれぞれ8.1%と9.8%で、比較的低い上昇率だった。これらの国々の賃金上昇率はユーロ圏や新興市場諸国のそれを上回っている。

同地域の経済は、新型コロナ流行の影響による落ち込みから回復基調にあり、労働市場の需給がますますひっ迫している。賃金の伸びが物価の上昇につながると同時にインフレ期待も高まっている。また、食品価格とエネルギー価格が上昇する一方で実質賃金が抑制されていることも賃金への上昇圧力につながっている。

インフレ率を国別にみると、7月はチェコが17.5%、ルーマニアが15%で、8月はポーランドが16.1%、6月はハンガリーが11.7%、スロバキアは13.2%だった。オックスフォード・エコノミクスによると、同地域では高いインフレ率が実質賃金の低下につながることが多い。これは労働組合が弱いためだ。現在労働市場の需給はタイトで、労働者の立場は強いものの、ポーランドやチェコ、スロバキア、ルーマニアでは賃金上昇が生活費の増加に追いついていない。これまでのところストライキの発生は少ないが、労働組合の関係者は秋の労使交渉は激しくなると予想している。

ハンガリーでは賃金は実質ベースで上昇しているが、金融機関の蘭INGバンクは先月、同国の賃金はまもなく下落し始めるとの予想を出した。これまで実質賃金の上昇が続いてきた一方で6月は前年同月比3.3%の伸びにとどまっている。7月以降も高インフレが続けば実質賃金の上昇率はマイナスに転じるため、今年下半期の消費に対する下押し圧力になるとの見通しだ。

ポーランドの今年4-6月期の賃金上昇率は11.8%で、インフレ率は13.9%だった。賃金の伸びが物価上昇率を下回るのはこの10年で初めて。チェコの同時期の名目賃金上昇率は4.4%だったが、実質では9.8%の下落となった。

オックスフォード・エコノミクスによると、賃金の伸びは今後も高い水準に維持されるため、コアインフレ率も高い状況が続くと見られる。一方、欧州経済の悪化に伴いインフレ圧力は弱まる。

ポーランドとハンガリーの名目賃金の伸びは今後も続き、インフレ率も高水準にとどまる見通しだ。インフレ圧力を抑えるため中央銀行は金融引き締めを継続せざるを得ないことから通貨安には向かわず競争力が削がれるため、中期的に成長率が悪化することになると予想されている。

賃金・物価スパイラルの期待が存在しなかったとしても、名目賃金の成長率が高止まりするリスクは特にポーランドとハンガリーでは現実的だ。賃金の上昇圧力が強くインフレ期待が大きいためで、コア価格への強い上昇圧力が継続し自国通貨に負担がのしかかる。一方で通貨は弱まらず、輸出に依存する中東欧経済のコスト競争力が失われて経済成長の重しとなる見通しだ。