IEA、ハンガリーのクリーンエネルギー導入と原発維持を評価

●同国は化石エネからの脱却に向け有利なポジションに立つ

●化石燃料の消費削減、再可エネの調達源多様化を提言=IEA

国際エネルギー機関(IEA)はこのほど行ったハンガリーに対する国別詳細審査で、同国ではクリーンエネルギーの導入拡大によりエネルギー安全保障の確保と対外依存度の低減を図ることができるとする調査結果を発表した。太陽光発電導入の急速な進展や原子力発電の堅持により、化石エネルギーからの脱却に向け有利なポジションに立っていると評価された。

前回報告書が発表された2017年以来、ハンガリーは気候変動対策の目標を引き上げてきた。20年には中欧諸国で初めて炭素中立性(カーボンニュートラル)を50年に達成するとの目標を法律に盛り込んだ他、21年には国家クリーン開発戦略と題する長期計画を発表した。同国は30年までに電力の90%を低炭素な電源から調達できるようにする予定だ。

今年2月のロシアのウクライナ侵攻により欧州におけるエネルギー安全保障を取り巻く環境は激変した。ハンガリーは7月、国内でのガスと石炭の生産増と石炭火力による発電量の増加、それにロシアからの天然ガスの輸入増に踏み切った。政府は国内の電力供給量の約50%を占めるパクシュ原子力発電所の4つの原子炉の廃炉を延期することも検討している。IEAはエネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの導入拡大を図る同国の政策について、化石燃料の輸入増と炭素排出量の増加を避けるためのプラグマティックなものだと評価した。

政府は今後送電網を強化し、天候に左右されやすい自然エネルギーにより生産される電力の送電能力を高めていく予定だ。

ハンガリーはロシアからの天然ガスや石油、原子力燃料の輸入に大きく依存しているのみならず、原子力発電所の建設でもロシアに頼っている。これを踏まえIEAは、化石燃料の消費を減らし再可エネの調達源の多様化を図るよう求めている。特に風力や地熱を有望視している他、既存の原子炉の運転期間延長にも言及している。

同時にエネルギー供給源の多様化の一環としてエネルギーインフラの接続強化を図るべきだと提言している。欧州連合(EU)域内のガス貯蔵施設や新しい液化天然ガス(LNG)ターミナルと中東欧諸国との接続強化に向け同国がイニシアチブをとるべきとの見方を示す。

またIEAは同国に対し、化石燃料の消費削減、エネルギー効率向上、クリーンエネルギー関連技術への投資増などに関する目標と政策を策定するよう求めている。その他、閉鎖が予定されているマートラ石炭火力発電所の周辺地域に対する支援を行い、脱石炭に向けたスムーズな移行を可能にすることも提言している。

IEAはハンガリーがクリーンエネルギー関連技術に対する投資にさらに重点を置くべきだと指摘。水素や太陽光、地熱、風力によるエネルギー生産を強化し、熱供給と発電における天然ガスと石炭への依存度を減らすべきだとの見方を示している。

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