●2会合連続の利下げ、政策金利は12%に
●来年の大統領選をにらみ、物価抑制よりも経済対策を優先
トルコ中央銀行は22日の金融政策決定会合で、主要政策金利である7日物レポ金利を1ポイント引き下げ、12%に設定した。利下げは2会合連続。市場は据え置きを予想していた。インフレ率が80%を超えて進む中、経済を下支えするため緩和策を継続する。
同国のインフレ率は8月に80.21%となり、1998年9月(80.4%)以来の高水準を記録した。インフレ率の上昇は15カ月連続。インフレ高進の背景について中銀は、地政学的な緊張の増大に伴うエネルギーコストの上昇や、金融政策の埒外にある供給側の要因、経済の基礎的な条件を反映していない価格設定の影響などによるものだとした。
中銀は声明で、地域紛争の解決と、物価の安定に向けて講じる「断固たる」措置を背景にディスインフレ効果が現れることを期待しているとしつつ、足元の第3四半期は外需の減退により経済活動の鈍化が認められると指摘。不確実性や地政学的リスクが高まる中、成長の勢いと好調な雇用環境の維持に向けて金融支援が必要なため、前回に続き1ポイントの利下げを決めたと説明した。また、金利水準は現在の見通しの下では適切だとする見解を繰り返した。
今後については、インフレ率を5%程度とする中期目標が達成されるまで「利用可能なすべての措置」を取るとしている。
■市場は一層の通貨安を予想、利下げは選挙対策との見方も
今回の利下げを受け、通貨リラの為替相場は対米ドルで一時18.38リラまで下落した。キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、リアム・ピーチ氏は、相場が来年3月までに24リラまで下がると予測。「トルコは巨額の経常赤字を補うため外国資本の流入に依存している。一方で外貨準備高は少なく、中銀は市場介入する立場にない」としたうえで、「ある時点で信用度が非常に低くなり、資金流入が絶える可能性が高い」と述べた。
一方、金融緩和に積極的なエルドアン大統領は楽観的な見通しを示す。同大統領は米PBSのインタビューに対し、現下のインフレは克服できない経済的脅威ではないと断言。「8%や9%のインフレ率で経済が脅かされている国々がある。わが国では80%だ」と述べ、数字の大きさは意味を持たないとの考えを示した。そのうえで、「年明けにはインフレを抑制できる。スーパーマーケットには十分な在庫がある」と言い切った。
スウェーデンのハンデルスバンケン・キャピタルマーケッツのエリック・メイヤーソン氏は、エルドアン大統領の意を受けて動く中銀の政策には来年6月の大統領選挙が重要な意味を持つとみている。同氏は選挙に向けて「短期的な経済成長の下支えが優先されており、そのためインフレにはさらなる上昇圧力がかかる」と指摘。「長期的にみて、同国経済はゆっくりと窒息していく」と警告した。