●ウクライナ戦争の中、同問題は公の議論の俎上にさえ乗らず
●昨年のEUウラン輸入に占めるロシアの割合は19.7%
欧州連合(EU)がロシアからのエネルギー資源調達削減に務めるなか、核燃料だけは従来どおり輸入が続いている。ゼレンスキー大統領やウクライナ高官が繰り返し制裁に盛り込むよう要請しているにも関わらず、この問題が公の議論の俎(そ)上にさえ乗らない背景には、EUの原子力発電業界がロシアからの核燃料およびサービスに大きく依存している現実があるもようだ。
EUでは、フィンランド、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、チェコなどで、ロシア型原子炉18基が稼働している。これらの原発だけでなく、例えばフランス電力公社(EDF)も、ロシア原子力公社(ロスアトム)から過去30年にわたり燃料供給を受けてきた。欧州原子力共同体(EURATOM)供給局によると、昨年のEUウラン輸入に占めるロシアの割合は19.7%。ロスアトムの子会社がウラン業界を仕切るカザフスタンを含めると、42.7%に上る。ロシアとの取引を今ストップすれば、EUの痛手は計り知れない。
EUは昨年ロシアに対し、ウラン原料の代金だけで2億1,000万ユーロ、カザフスタンには2億4,500万ユーロを支払った。これにサプライチェーンに関連するサービス料金を加えたものが、ロシアの対ウクライナ戦の軍資金に活用されていることになる。