EUでデジタル市場法が施行、巨大IT企業への規制強化

●ゲートキーパーと呼ばれる巨大プラットフォーム企業が対象

●規制を通じ、公正な競争を促す狙い

巨大IT企業に対する欧州連合(EU)の新たな規制「デジタル市場法(DMA)」が1日、施行された。市場支配的な地位にあるプラットフォーマーに対する義務と禁止事項を予め明確化することで、公正な競争を促すのが新規則の狙い。2023年5月2日から適用を開始する。

DMAは、米グーグルやメタ(旧フェイスブック)、アマゾンなどの米IT大手を念頭に、「ゲートキーパー(門番)」と呼ばれる巨大プラットフォーム企業に対し、他社のサービスを排除したり、自社サイトで自社の製品やサービスを優遇するなどの行為を禁止することが柱。

EU域内で検索エンジンや交流サイト(SNS)、動画共有サイト、クラウドサービスなどの「コア・プラットフォーム」サービスを展開する事業者のうち、時価総額が750億ユーロ(約10兆8,900億円)以上または過去3年間の域内における年間売上高が75億ユーロを超え、域内のサービス利用者が月間4,500万人以上で、法人ユーザーが年間1万社を超える事業者が規制の対象となる。

ゲートキーパーに該当する企業は自社の製品やサービスを検索結果で上位に表示したり、自社サイトを利用する競合他社のデータを使って自社サービスが有利になるようにするなどの反競争的行為が禁止される。スマートフォンなどに特定のアプリを予めインストールすることもできなくなる。

一方、消費者保護の観点から、利用者がサービスを解約する際、登録時と同程度の簡単な手続きで済むようにしなければならない。また、寡占化が進むのを防ぐため、ゲートキーパーはいかなる買収計画も欧州委員会に報告しなければならず、欧州委は潜在的な競争の脅威をつぶす目的で新興企業を買収する「キラー買収」を阻止することができる。

デジタル市場法に違反した企業は世界における年間売上高の最大10%の罰金が科される可能性があり、違反行為を繰り返せば上限が最大20%に引き上げられる。

ゲートキーパーに該当する可能性がある企業は、新規則の適用開始から2カ月以内(23年7月3日まで)に欧州委に対して自社の事業内容を報告する必要がある。欧州委は45営業日以内に当該企業が規制の対象になるかどうかを判断し、ゲートキーパーに指定された企業は6カ月以内(24年3月まで)にDMAが定める義務や禁止事項を順守しなければならない。

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