●長期的にみれば確かな技能を持つ人材の不足は悪化する=同CEO
●教育水準の低い層や地域を巻き込み、全体の底上げを
イスラエルのシンクタンクであるスタートアップ国家政策研究所(SNPI)のウリ・ガバイ最高経営責任者(CEO)は先日開かれたハイテク産業の雇用をテーマとする「ハイ&ハイヤ(Hi&HiRe)会議」で、経済成長の持続に向けてハイテク人材の育成を続けていく必要性を訴えた。特に、教育水準の低い層や地域を巻き込んでいかねばならず、イスラエル社会に横たわる格差をなくすことが求められるという考えだ。この発言は、議会選挙の結果、右派「リクード」と極右3党の連立政権が発足する見通しであることを念頭に置いたものとみられている。
ガバイCEOはまず、景気が減速してテクノロジー産業でも解雇の動きが相次いでいるが、長期的にみれば確かな技能を持つ人材の不足は悪化するという見方を確認した。次に、専門職需要はいわゆるハイテク「業界」だけでなく、銀行などの他業界にもあると指摘し、より多くの人材を育てなければならないと強調した。そして、その実現には社会的・経済的格差に起因する教育格差の是正が肝要だと訴えた。
「これまでは、コーディングブートキャンプ(IT技能の短期習得講座)の開催などを通じて人材育成が順調に進んできた。しかし、今後はテクノロジーとの縁が薄く、教育水準が低い貧しい層も取り込んでいかねばならなくなる。それには、イスラエル社会の底にある問題に取り組まなくてはならない。都市と地方という地域的な違い、一般のユダヤ人と、超正統派ユダヤ人およびアラブ人といった社会的な違いによる数学・英語能力の差を縮めていく努力が必要だ」とし、社会・経済的格差が教育の格差を生み、教育の格差が再び社会・経済的な格差につながるという悪循環を断つための根本的な解決が、テクノロジー産業を長期的に成長させる原動力になると説明した。