ヤンデックス顧問にクドリン元財相が就任

●同社の再編を経営側と政府側双方が満足できる形で進められると期待

●同社は制裁対象ではないが、禁輸措置を受け経営が苦境に

プーチン大統領の信頼が厚いことで知られるアレクセイ・クドリン元財務相(62)は5日、IT大手ヤンデックスの上級顧問に就任することを公式に認めた。自由主義経済の仕組みを熟知し、かつ、プーチン大統領と良好なつながりを持つ同氏がヤンデックスに乗り込むことで、同社の再編を経営側と政府側の双方が満足できる形で進められると期待されている。

オランダに本拠を置くヤンデックスの持ち株会社は先月25日、「現行の地政学的環境に照らし、グループの所有権とガバナンスを再編する可能性」をいま一度検討していると明らかにした。消息筋によると、プーチン大統領とクドリン元財相の深夜会談を受けた動きで、国外事業と国内事業を分割する方向という。

国内事業には、検索エンジン、広告事業および運輸(タクシー)、電子商取引(EC)、フードデリバリー、娯楽サービス(動画配信など)の資産を残す。持ち株会社はこの分野の資産を段階的にロシア投資家に売却する。

国外で進めているドローン開発、クラウドサービスなどはイスラエルの新拠点に移し、持ち株会社が引き続き資産を保有する。将来的に持ち株会社は企業名を変更する。

ロシアの業界筋は、この解決案が双方に利をもたらすとみる。大統領側は、クドリン元財相のおかげで先端技術を持つヤンデックスを純ロシア企業に改組し、政府との結びつきを緊密化させることができる。ヤンデックス側にとっては、国有企業になる運命から逃れ、ロシア資本の民間会社として存続できる。

ヤンデックスは「ロシアのグーグル」とも呼ばれるナスダック上場企業。ロシアがウクライナへ侵攻した2月末以来、国内勢力と西側投資家の板挟みとなり、将来の見通しが急変した。会社自体は制裁対象とはなっていないが、経営者や株主が制裁リストに載ったり、対ロシア禁輸措置で調達が難しくなるなど、経営が苦しくなっている。再編には事実上、ロシア当局の承認が必要となるため、政府側との一致点を探っていた。

クドリン氏は、サンクトペテルブルク時代からプーチン氏と交流があり、プーチン氏が1997年に連邦行政府に就職できた理由の一つにクドリン氏の推薦があったと言われる。

プーチン政権下の2000年から12年にかけて一貫して財務相を務め、◇厳格な自由主義的財務政策◇巨大な資源収入を財政に組込み活用する仕組み◇対外債務の整理――などを成し遂げた。2018年からは連邦会計検査院(IFAC)長官を務めたが、先月29日に辞任した。

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