化石燃料の脱ロシア化推進計画、排出量取引の収入活用で合意

●新たに200億ユーロの財源を確保

●リパワーEU計画では27年までに官民で2,100億ユーロを投じる

欧州連合(EU)加盟国と欧州議会は14日、化石燃料の脱ロシア依存を目指す「リパワーEU」計画の推進に必要な追加投資の一部をEUの温室効果ガス排出量取引(ETS)による収入で賄う案について合意した。これによって新たに200億ユーロの財源を確保した。

欧州委員会が5月に発表したリパワーEUは、気候変動対策を進めながら、天然ガスなど化石燃料の脱ロシア依存を実現するための具体策をまとめたもの。省エネの推進、エネルギー調達先の多様化、再生可能エネルギーへの移行促進、クリーンエネルギー分野への投資拡大などが柱だ。

同計画では2027年までに官民で2,100億ユーロを投じる。EUはコロナ復興基金(正式名称:次世代EU)の柱となる復興・強靭化ファシリティ(RRF)の資金を活用する計画だ。ただ、試算では30年までに多額の追加投資が必要になるため、欧州委はETSの収入をRRFに組み込み、活用できるようにすることを提案していた。

加盟国と欧州議会の合意では、200億ユーロのうち40%に相当する80億ユーロはETSの収入、残る120億ユーロをEUのイノベーション基金で賄う。イノベーション基金は余剰排出枠を一旦、内部留保しておき、需給がひっ迫した場面で取り崩して排出権価格を安定させる「市場安定化準備(MSR)制度」の収入が財源となっているため、こちらも排出権取引市場から資金を調達する形となる。

欧州委案では200億ユーロの全額をMSRの資金活用によって確保する方針だった。これにオランダとデンマークが留保金に手を付けると排出権取引市場の信用が低下するなどとして難色を示し、調整が必要となっていた。

合意内容は加盟国、欧州議会の双方による正式承認を経て、2023年から実施される。200億ユーロは加盟国に配分され、リパワーEU推進に必要な投資に使われる。配分額は各国のエネルギー消費に占める化石燃料の割合などに応じて決まる仕組みとなる。

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