●ゼレンスキー大統領の欧州歴訪に合わせ
●同大統領はEU早期加盟に向け、年内に交渉を始めたい考え
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、欧州連合(EU)首脳会議に出席し、同国への侵略を続けるロシアに対抗するため軍事支援の拡大を求めた。EU加盟については早期実現に向け、年内にも交渉を始められるよう支持を訴えた。EU側は最大限の支援継続を表明するとともに、近く第10弾となるロシアへの追加制裁案をまとめる方針を明らかにした。
ゼレンスキー氏は8日にロンドンでスナク英首相と、さらにパリでマクロン仏大統領とショルツ独首相と会談し、戦闘機を含む兵器の追加供与を要請した。9日には欧州議会で演説した後、EU首脳会議に出席した。2022年2月のロシアによる侵攻開始後、今回の欧州歴訪は米国に続く2回目の外国訪問となった。
ゼレンスキー氏は首脳会議で「自由なウクライナなくして自由な欧州はない」と発言。侵攻開始から1年を機に、ロシアが近く大規模な攻撃を仕掛けるとの見方が強まる中、「われわれは近代的な戦車や長距離ミサイル、さらに戦闘機を必要としている」と強調し、ロシアが新たな兵力を動員する前に軍事支援を強化するよう訴えた。
EU加盟に関しては、ウクライナは22年6月の首脳会議で「加盟候補国」に認定され、2年以内の加盟実現を目標に掲げている。ゼレンスキー氏は「ウクライナがロシアとの戦争に勝利し、EUに加盟した時にはじめて欧州の長期的な平和が実現する」と強調。早期加盟に向け、年内に交渉を始めたいとの考えを改めて示した。
EU側は首脳会議でロシアの行動を強く非難し、ウクライナの独立と主権、領土保全および自衛権に対する支持を改めて表明。軍事・財政・人道支援の継続を確約するとともに、ロシアに対する100億ユーロ(約1兆4,000億円)超の輸出禁止措置を含む追加制裁案を近くまとめる方針を示した。
EUのミシェル大統領は会議後の記者会見で、ロシアの大規模攻勢を念頭に「今後数週間、ないし数カ月が特に重要だ。必要な最大限の支援を行う必要がある」と発言。欧州委員会のフォンデアライエン委員長はロシアに対する追加制裁について、政治家やロシア軍幹部に加え、プーチン政権のプロパガンダを拡散する団体や個人などを制裁の対象とする考えを示した。EU加盟に関しては、交渉開始時期などについて「定まったスケジュールはない。プロセスの進捗は加盟候補国の取り組みによって決まる」と述べ、他の候補国と同様、汚職対策などを進めて加盟基準を満たす必要があるとの立場を繰り返すにとどめた。