●旧ソ連のウラン工場で原料を加工し、磁石生産に供給
●磁石工場の最大年産量はEV170万台に匹敵する見通し
ウラン鉱石の残渣(さ)からレアアースを回収し、電気自動車(EV)用の磁石を生産する計画が、エストニア北東部のシラマエでカナダ系企業ネオ・パフォーマンス・マテリアルズ(Neo Performance Materials)によって進められている。同社が所有する旧ソ連のウラン抽出工場で原料を加工し、近隣に建設する新工場でEVのドライブトレインに不可欠な磁性粉末を生産するものだ。レアアース磁石工場の設置は欧州初で、レアアースの中国依存脱却のカギとなる可能性を秘める。
ネオはシラマエで、自動車や航空宇宙、マイクロエレクトロニクス分野で用いられるタンタル、セリウム、ランタン、ネオジム、プラセオジムといった希土類を加工している。現在はこれらの材料を一旦、タイと中国に持つ磁石工場に送り、最終成品を欧州に返送する必要がある。このため同社は、シラマエの東25キロにあるロシア国境の町ナルバに1億ユーロを投じて磁性粉末の生産工場を建設し、同問題を解決する方針だ。
新工場は2025年に稼働の予定で、当初は年産量が1,500トン、売上高は1億5,000万ユーロを見込む。フル稼働時の年産量は5,000トンで、2021年に欧州で登録されたEV170万台のすべての需要を満たす量に匹敵する。エストニア政府は同計画に対し、EU補助金から1,870万ユーロの拠出を決めている。
ネオのコンスタンティン・カラヤノポウロス最高経営責任者(CEO)は、製造に必要な加工済みの原料も同地から提供できることを踏まえ、「欧州全体の材料のイノベーションハブとなり得る」と述べた。同社は現在、製品供給でボッシュ、シェーファー、シーメンス、ステランティス、テスラなどと交渉中だという。