2023/4/26

総合・マクロ

欧州委が東欧5カ国を緊急支援、ウクライナ産農産物流入で

この記事の要約

●同国産の農産物が5カ国に流入するのを制限する緊急措置を実施●打撃を受けている東欧5カ国の農家に1億ユーロの補償を支払う欧州委員会は19日、アフリカなどに輸出されるはずのウクライナ産の農産物が欧州連合(EU)市場に流入し […]

●同国産の農産物が5カ国に流入するのを制限する緊急措置を実施

●打撃を受けている東欧5カ国の農家に1億ユーロの補償を支払う

欧州委員会は19日、アフリカなどに輸出されるはずのウクライナ産の農産物が欧州連合(EU)市場に流入し、価格を押し下げている問題で、打撃を受けている東欧5カ国の農家に1億ユーロ(約147億円)の補償を支払うとともに、ウクライナ産の小麦などが5カ国に流入するのを制限する緊急措置を実施する方針を明らかにした。緊急措置は6月末まで継続する。

ウクライナ産の穀物などはロシアの軍事侵攻によって黒海沿岸からの輸出が不可能となり、東欧諸国が陸路での移送ルートとなっている。しかし、EUがウクライナへの支援策として同国産農産物の関税を免除したため、実際には安価な農産物がポーランドなどに大量に流入し、農産物価格が下落して東欧諸国の農家が深刻な打撃を受けている。このためポーランドとハンガリーは15日、スロバキアとブルガリアも19日までに、国内農家の保護を目的に、ウクライナからの農産物の輸入を6月30日まで禁止すると発表。同時に4カ国にルーマニアを加えた東欧5カ国は欧州委に対し、早急に包括的な対応策を検討するよう求めていた。

欧州委のフォンデアライエン委員長は5カ国の首脳に宛てた書簡で「予期せぬ輸入の急増が招いた結果に対処する必要がある」と指摘。関税の免除でウクライナからの農産物の輸入が急増し、東欧諸国の農家が苦境に断たされている現状を認めたうえで、同国からの小麦、トウモロコシ、ひまわりの種、菜種の流入を制限する措置を打ち出した。

これに先立ちポーランド政府は18日、ウクライナ産の農産物について、ポーランドの通過を認めると発表。第1陣として、21日早朝にウクライナ産のトウモロコシや卵などをオランダに運ぶトラックがポーランドを通過した。ただし、農産物がポーランドに流入しないよう監視することが条件で、同国への輸入は引き続き禁止する。

ウクライナ産農作物を巡っては、ロシアとウクライナが22年7月、国連とトルコの仲介で黒海経由での穀物輸出に関する合意を締結した。現在は1カ月に約300万トンの穀物が黒海沿岸からアフリカや中東などに輸出されている。ただ、ロシアは西側諸国による制裁でロシア産農産物の輸出が妨げられていると主張し、5月18日に期限を迎える合意を延長しない可能性をちらつかせている。ロシアとの合意が終了すれば再び陸路での輸出に頼らざるをえなくなり、EU内の亀裂が深まる恐れがある。

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