欧州委が関税制度の改革案発表、「データハブ」で通関手続き簡素化

●データハブはまず、2028年にEC事業者を対象に運用を開始

●38年以降は同ハブの利用を義務化

欧州委員会は17日、欧州連合(EU)関税同盟が完成した1968年以来、最も野心的かつ包括的な関税制度の改革案を発表した。電子商取引(EC)の普及などによる輸入量の増大や、それに伴う税関検査の複雑化に対応するため、データ主導型のアプローチを通じて通関手続きを大幅に簡素化し、輸入業者と税関当局双方の負担軽減を図る。今後、欧州議会と閣僚理事会で改革案について討議する。

改革案の柱は、通関手続きに必要な情報を記録する「EU関税データハブ」の構築と、データハブの運用を監督する「EU関税局」の設置。輸入業者は煩雑な輸入申告の書類を提出する代わりに、製品やサプライチェーンに関する情報を直接データハブに記録することが可能で、一定の期間内であれば複数回の輸入に対して1回のデータ提出で済ませることができる。

EU関税データハブはまず、EC事業者を対象として2028年に運用を開始する。32年には輸入業者全体に対象を拡大し、38年以降はデータハブの利用を義務化する。

一方、信頼できる事業者に対して税関手続きを簡素化する既存の認定事業者(AEO)制度を強化するかたちで、新たに「信頼・検査(Trust & Check)貿易業者」のカテゴリーを設け、事業プロセスやサプライチェーンが完全に透明であることなどの条件を満たした事業者に対し、通関手続きや検査を簡素化する。

このほかECの利用拡大に対応するため、域内の消費者がオンラインプラットフォームを介して域外から商品を購入する際、プラットフォーム事業者が輸入業者として通関手続きや関税の支払いに関して責任を負う。また、電子商取引を利用した詐欺などの不正行為を防止するため、150ユーロ未満の商品に対する関税の免税措置を廃止する一方、低額商品の関税分類を4つに減らして計算しやすくする。欧州委はこうした措置により、年間10億ユーロの追加的な関税収入を確保できると試算している。

上部へスクロール