東欧が欧州のヒートポンプ生産地に

●ポーランド、チェコ、スロバキアに大手メーカーが工場設置

●必要な人材が比較的安く雇用できるのが強みに

燃料価格の高騰やロシア・ウクライナ戦争に起因するエネルギー危機でヒートポンプの需要が高まる中、東欧がヒートポンプの重要な生産地となりつつある。必要な人材が比較的安く雇用できるのが強みとなっているもようだ。

欧州ヒートポンプ協会(EHPA)によると、業界企業は2022~25年に総額50億ユーロ以上を欧州に投資する計画だ。投資先別でみると、ポーランドが7億5,500万ユーロ、チェコが3億ユーロ、スロバキアが8,600万ユーロを占める。ダイキン、フィスマン、ボッシュ、パナソニック、ヴァイラント、スティーベルといった大手が、ポーランド、チェコ、スロバキアの国境域に工場設置を発表したことが数値に反映されている。

欧州連合(EU)が目指す2050年までの気候中立化で、暖房は主要課題の一つ。ヒートポンプが実現に向けて大きな役割を果たすとみられており、EUでは27年までに1,000万台の増設を目指す。また、30年までにヒートポンプ年間販売数を700万台に増やして天然ガス消費量を210億立方メートル削減し、ロシアからのガス輸入を停止したい意向だ。

EUのヒートポンプ需要の73%は域内で生産されているが、地元企業はアジア企業や、政府の後押しを受けた米国企業との競争を視野に入れて増産に動いている。欧州委員会は、地域暖房用の地中熱・大型ヒートポンプ分野に欧州企業の強みをみる。例えば、MANエナジーソリューションズは、出力48メガワットと世界最大級のヒートポンプを開発した。このような巨大ヒートポンプは、すでにデンマークのエスビャウやスウェーデンのストックホルムなどで主要暖房技術として採用されている。

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