ロシア、経済見通しを下方修正

ロシア経済省が経済成長見通しを下方修正したもようだ。事情に詳しい関係者が6月27日、報道機関に明らかにしたもので、来年初めの付加価値税(VAT)率引き上げなどの影響を検討した結果、今年の成長率は前回の4月予測の2.1%から1.9%へ、来年は2.2%から1.4%へ引き下げられたという。世界平均(3.9%)に後れを取り、先進工業諸国との経済力の差も縮まらない同国の現状が浮き彫りになった。

ロシア経済の成長鈍化は今に始まったことではなく、2014年以降、ウクライナ問題をめぐる欧米からの制裁や、経済の屋台骨である原油の相場の下落に見舞われて苦戦を強いられてきた。15、16の両年にはマイナス成長となり、結果として過去5年の年平均成長率はわずか0.3%、過去6年でも0.8%にとどまった。

注目すべきは、原油価格が上昇すれば経済が改善するという以前の公式が当てはまらなくなっている事実だ。予想相場は4月のバレル当たり58.6米ドルから今回61ドルに上がったが、成長率予測はそれと逆に下降した。原油相場が100ドルに達していた2012年、13年の時点ですでに、ロシア経済が顕著に減速したのはその前触れだったともいえる。

この時点で原油価格と消費に支えられた成長が限界に達し、設備投資に成長の軸足を移すべき時期に差し掛かっていたが、ロシアにはそれが可能な事業環境が存在しなかった。追い討ちをかけるように、14年以降の欧米との関係悪化で投資活動は大きく後退した。経済省は設備投資の予想成長率についても、今年は従来の4.8%から3.5%へ、来年は5.6%から3.1%へ、それぞれ下方修正している。

ロシアの事情に詳しいある西側の専門家は下方修正の背景について、「これまでロシアは、米国の制裁が投資に与える影響を過小評価していたのではないか」と推測する。「米国が追加制裁を発表すると投資計画が凍結され、しばらくして再び検討されるようになると、また追加制裁が出て見送られる、ということが繰り返されている」という。

米国の金融政策が引き締めに向かっていることもロシアには不利だ。米国で利上げが実施されれば、投資家が資金を新興諸国から米国へ振り向けるようになるのが確実だからだ。

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