ロシアのプーチン大統領は14日、国内航空会社が国外からリースした民間航空機を
運航し続けられるようにする法律に署名した。対ロ制裁の流れで、ロシアにある
リース機のほとんどの耐空証明が取り消されたことに対応する措置だ。これによ
り、国外リース会社が航空機の返還を受けられないという見通しがさらに強まっ
た。
即日発効した新法は航空会社に対し、リース機を国内で登録してロシア当局から耐
空証明を取得することを認めた。これは、民間航空機の登録国を1カ国に制限する
国際法に反するが、大統領は新法によって、リース機の運航継続の前提が整ったと
いう立場だ。
欧米などによる制裁の一環として、ロシア航空会社と取引するリース事業者は契約
を解除し、今月28日までに機材を回収するよう迫られている。その数は515機、価
値は合計100億米ドルに上る。リース企業は戦争による損害に対しても保険に加入
しているが、保険会社側としてもこれだけ巨額の保険金をやすやすとは払えない。
リース企業、ロシア航空会社、保険会社の三つ巴の戦いが長期間続く可能性が強
い。いずれにせよ、リース事業者は巨額の減価償却を迫られそうだ。
一方、航空機が国内に残っても、ロシア航空業界の根本的な問題解決にはつながら
ない。やはり制裁の一環で、エアバスやボーイングから代替部品の供給が受けられ
ず、ある機体の部品を他の機体につけかえる「共食い整備」となるのは時間の問題
だ。中古部品や非純正部品の使用は安全上のリスクを伴う。これまで外国で利用し
てきた機体保守サービスが受けられなくなるのも深刻な問題だ。
ロシアの航空会社は、今回の新法で苦しい選択を迫られる。リース機の国内登録を
実際にするかしないかの判断が、航空会社にゆだねられているためで、登録すれ
ば、たとえ将来的に欧米との関係が改善してもリース事業者との新規契約は困難と
なる。一方で、登録しなければ国内線さえ運航できない状況に直面する。ロイター
通信によると、ある航空会社の関係者は、本来なら「リース会社に返却したい」と
いう心情をもらしたという。
いずれにしても、航空市場は世界全体で動いている。ロシア政府の措置は国として
の信用を落とすもので、ロシアの航空会社が再び国際市場に復帰するハードルは非
常に高い。