独ハイデルベルク・マテリアルズのブルガリア子会社であるデヴニャ・セメント
(Devnya Cement)はこのほど、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)技術を
用いてセメント生産の脱炭素化を目指すプロジェクト「ANRAV-CCUS」の実施に向け
て試験事業を開始した。炭素回収率99%を達成するため、複数の回収技術を組み合
わせたテストを行う。同プロジェクトが成功すれば、同社は東欧初のカーボン
ニュートラル(炭素中立)のセメント生産者となる。
セメントの製造過程では原料の石灰石に含まれている二酸化炭素(CO2)が不可避
的に放出される。このため、業界が炭素中立を実現するためにはCCUSが必要不可欠
とされる。
ANRAV-CCUSは、ブルガリア北東部のデヴニャ工場で回収したCO2をパイプラインで
輸送し、黒海の枯渇ガス田に永久貯蔵するものだ。南東欧地域が2030年の環境目標
を達成する一つのカギになるとみられている。プロジェクト費用は7億5,000万ユー
ロに上る見込みで、欧州連合(EU)から1億9,000万ユーロのイノベーション助成を
受けている。
南東欧のセメント生産者ではこのほか、クロアチアのネクセ(Nexe)が酸素燃焼に
よるCO2回収技術の導入を予定しているほか、スロベニアのサロニット・アンホ
ヴォ(Salonit Anhovo)は工場屋上に太陽光発電システムを設置して生産の脱炭素
化を進めている。